『入浴福祉新聞 第109号』(平成21(2009)年7月1日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
皮膚は全身の健康状態を映し出します
病変の早期発見も訪問入浴介護の役割
体毛が退化したヒトの裸姿は、何とも頼りなく危なっかしい感じさえします。
しかし、病原微生物の侵入は簡単には許さず、少しぐらいに引っ掻いたり擦ったりするくらいでは傷もつかないほど強靭にできています。それだけに、皮膚の異常は看過できない事態の発生ともいえるのです。
ヒトの皮膚は大きく分けて、表皮~真皮~皮下組織といった3層からできていて、外側の表皮は、角質層~顆粒層~有棘層~基底層など4層から構成されています。
基底層では新しい表皮細胞が次々とつくられ、外側に向かいながら分裂と成長を続け、角質層細胞になると、やがて角化した垢となって剥がれ落ちる仕組みです。
その角質層は驚くべきことに15から20もの多重層になっていて、セラミドという脂質を中心とする細胞間物質でガッチリと固定され、外部からの異物をほとんど侵入させず、身体の水分ほかの物質も出さない強固な防御壁の役割を担っています。
ところが困ったことに、この強固なぼぎょへきであるはずの角質層も、加齢によって細胞間脂質が減少して保湿機能も低下し、乾燥状態になってしまうのです。加齢は、表皮の下の真皮や皮下組織も衰えさせるためなおさら厄介なことになり、皮膚全体が老化現象を起こしてしまいます。
そこで発生するのが、ドライスキン(皮膚の乾燥)による掻痒です。これを乾皮症や皮脂欠乏性湿疹などと呼び、高齢者のほとんどに発生するため、老人性皮膚掻痒症ともいわれています。
乾皮症や皮脂欠乏性湿疹、老人性皮膚掻痒症を抑えたり防いだりするためには、保湿剤を塗ることしか現在では対策がありません。
※発行当時の原稿をそのまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。