『入浴福祉新聞 第109号』(平成21(2009)年7月1日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
皮膚は全身の健康状態を映し出します
病変の早期発見も訪問入浴介護の役割
入浴をしますと、大切な細胞間脂質などが、浴後の水分蒸発と一緒に出てしまいますので、なおさら保湿剤の塗布が欠かせません。
ちなみに、高温入浴や長時間入浴をしたり、石鹸をたくさん使って身体をゴシゴシ洗ったりすると、角質の水分がよけいに出てしまい、乾皮症や皮脂欠乏性湿疹、老人性皮膚掻痒症を促進してしまいます。
日本の水は物質を溶かしやすい性質があり、入浴するだけで汚れはほとんど落ちますので、優しくマッサージをするような洗い方をすれば充分。入浴剤を使う際も、角質層にダメージを与えやすい硫黄系は避け、保湿成分が含まれている種類がベストです。
保湿剤には、軟膏、クリーム、ローションなどがあり、主成分も、ヘパリン類似物質、尿素、ワセリンといった具合に、最近はさまざまな製品が出ていますので、その人に合った種類を選びたいものです。
乾皮症や皮脂欠乏性湿疹、老人性皮膚掻痒症も軽度の場合は市販の製品で対応できるはずですが、かぶれ状態になったり、明らかに皮膚の病変を認める場合は皮膚科の診断が必要なのは言うまでもありません。
さて近年は、全身の健康状態は皮膚にも現れる、といわれるようになり、内科医も日病変に関心を持つようになってきました。
この点、訪問系のサービスのなかでも訪問入浴介護は全身を観察できるため、要介護者の異変を早期に発見できる強みがあります。
全身が白すぎる場合は低血圧や貧血、全身が黒っぽい場合は肝硬変や原発性慢性副腎皮質機能低下症、全身が赤い場合は高血圧や発熱、全身が紫がかっている場合は心肺機能の異常、といった具合に、さまざまな病変のシグナルを皮膚は送ってくれますので、そうした時はケアマネジャーに伝えるなどの対応が期待されます。
高齢者の皮膚トラブルに関するテキストは、たくさん出版されるようになっていますので、訪問入浴介護の基本的知識として、しっかり学びたいものです。
※発行当時の原稿をそのまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。