『入浴福祉新聞 第104号』(平成20(2008)年4月15日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
医療や介護の現場に笑いとユーモアを!
入浴のひとときは最高の笑顔を誘います
医療の現場に[笑いとユーモア]を取り入れる模索が始まっています。
漫才や落語を楽しむと、糖尿病疾患の血糖値が下がる…皮膚炎に悩む人のアレルギー反応が軽減する…といった[笑いとユーモアの医学的効用]を立証する報告もかなり出始め、真剣に検討している病院も出てきました。
アメリカやヨーロッパでは、[クリニクラウン]というボランティア[病院道化師]が実際に活躍していて、道化師スタイルの人が病院を訪れ、笑いとユーモアを振りまき、患者にケラケラしていただくそうです。
最近は日本でも、看護師の有志らが[看護と笑い]をテーマに研究を始め、2005年には「日本ホスピタル・クラウン協会」が名古屋に誕生しました。実際に道化師に扮して医療機関を訪問するのは、ふだんは遊園地などで道化師の仕事をしている人たちが中心で、もちろんボランティアです。
道化師を受け入れてくれる医療機関はまだまだ限られているようですが、こうした活動はもっと広げてゆくべきでしょう。
実は、[笑いとユーモア]の効用は、とかく深刻で暗くなりがちなターミナルケアに取り組んできた医療機関では早くから注目してきました。
難病に苦しんだり、ターミナル期にある患者は誰しも、緊張…不安…恐怖…孤独…怒り…敵意…焦燥…消耗…などにさいなまれ、ストレスをいっそう蓄積されてしまう悪循環に陥り、家族の心理負担も増し、当人の生活の質もいっそう低下してしまいます。
それを緩和できるのが、[笑いとユーモア]で、[笑いとユーモア]を最後まで前向きに生きようとする刺激にしてゆこう、と有名な大阪の淀川キリスト教病院ホスピス病棟などでは、1980年代から取り入れてきました。
同病棟の看護師らによる実践事例が、『看護技術』1988年10月増刊号[癒しの技術とターミナルケア]に掲載されていて、患者と看護師の日常会話のなかに、いい意味での軽口を交わす試みをしているとの報告が寄せられています。
例えば入浴の時に、こんな会話が交わされます。
「温泉でも行けたらええな」と男性患者のSさんが言うと、すかさず看護師は「ここの温泉でいまは我慢してくださいネ」。これだけの会話でも、男性患者は「そやな、ここの温泉もなかなかのもんや」と顔をほころばせて満足気だったというのです。
精神の緊張を解きほぐしてくれる入浴は、[笑いとユーモア]を誘ってくれる入浴は、最高の手段でもあります。これから、訪問入浴介護も在宅ターミナル期にある方と家族からの依頼が多くなるはず。[笑いとユーモア]の間隔を身につけながら、最後まで明るい入浴介護を提供したいものです。
※発行当時の原稿をそのまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。