『入浴福祉新聞 第70号』(平成11(1999)年12月1日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
悩みのタネ〔浴室のカビ〕防止策は?
2ヵ月に一度まんべんなく湯で洗い流す 使用しない時は必ず通風乾燥させる
冷水シャワーはカビが浮遊して逆効果
梅雨どきを中心に、猛烈な勢いで繁殖する浴室のカビ。掃除を怠っていると、タイルの目地が真っ黒に。
これは「クロカワカビ」と呼ばれるものですが、浴室の浴槽はけっこう億劫なもので、ほとんどの家庭の悩みのタネです。
黒カビの他に、エクソフィアラにコクショクコウボなど多種類が繁殖し、1㎠に1万個もいる家庭は珍しくありません。
最近は、防カビ加工の浴室も登場しているものの、5年も経過すれば、その効果はなくなってしまうそうです。
しかし、壁面などに熱めの湯をかけ、浴室内を乾燥させることで、かなり防げることがわかりました。
この「浴室のカビ研究」を実施したのは、大阪市立環境科学研究所の浜田伸夫研究主任と近畿大学農学部の藤田藤樹夫教授。
26世帯の協力で調査が行われ、その結果が今年の春に開催された日本防菌防黴学会でも発表されてたいへん注目されました。
報告書によりますと、浴室のタイル壁を、①湯、②浴室用洗剤、③アルコール、④カビ取り剤、などで清掃。
すると、カビ取り剤やアルコールでは、清掃前の約100分の1にカビを減らすことができ、風呂用洗剤や湯でも約40分の1に減少しました。
その後、10日ごとにカビの復活度を調べると、30日後から酵母が顕著に増加。しだいにカビが成長することが確認されました。
しかし、40日が経過しても、アルコールやカビ取り剤では清掃前の10分の1、お湯でも清掃前の5分の1ぐらいまでしか増殖しませんでした。
さらに60日がたつと、カビ取り剤で清掃した場合とお湯で清掃した場合の差はほとんどなくなりますが、それでも清掃前の2分の1ほどに抑えられるそうです。
しかし、2ヵ月たってもカビの増殖が意外に低く抑えられたのは、浴室が乾燥状態に保たれていたためで、アルコールで清掃しても、換気扇がないなどで浴室の湿気が高い状態ですと、60日後には清掃後の20倍にもなってしまいます。これに対して換気扇を利用して湿気を防いでいると、約4倍程度の生育に抑えられるというのです。
浴室の乾燥度は、1階より2階、北側より南側が優れますので、このへんも念頭にいれながら乾燥に気を付けたいものです。
入浴後に簡単な清掃を、と考えてシャワーで冷水を壁面などにかける家庭も多いかと思いますが、これは禁物。
水をかけることで浴室内にカビが浮遊してしまい、カビに水分を与えることにもなり、増殖してしまいます。
浜田さんの研究では、その方法では500倍に増殖したカビが浴室に浮遊してしまうそうです。
カビの胞子を吸い込むとアレルギーを起こす人もいますので、とくに注意する必要があるとのことです。
また、カビ取り剤はタイルの目地が白くでき、きれいになって気分がいいのですが、その成分は次亜塩素酸とカセイソーダが主。臭気も強く、皮膚への刺激も強いため、カラダの安全を考えると、頻繁に利用するのは避けた方が無難。
目地をタワシでゴシゴシと擦るのも、目地を傷めてカビが住みやすくするので勧められません。
結局、〔死に湯〕といわれている42℃ぐらいのお湯を壁面などにかければ、お湯に弱いカビの胞子にダメージを与えられます。
〔熱めの湯〕が最良の〔カビ退治剤〕のようです。
注意したいのは、意外と浴室の上部と天井は清掃していない点です。壁の上部、そして天井にもお湯をかけ、乾燥させておけば、カビに悩まされることもなくなるようです。
つまり、頻繁に清掃するよりも、浴室全体を2ヵ月に1回、お湯で清掃すること、との結論に達しました。
※発行当時の原稿のまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。
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