『入浴福祉新聞 第71号』(平成12(2000)年4月1日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
「Japanese only」 北海道の温泉施設で差別事件騒動
〔外国人の入浴お断り事件〕記事が、昨年12月4日付『朝日新聞』夕刊に掲載され、この2月にはNHKテレビも報道番組で取り上げたため、かなり驚かれた読者もいるのではないでしょうか。
以前にも、どこかの県で同じような事件が起きて、物議をかもしだしましたが、外国の真似ばかりしてきた日本人は、もしかしたら、外国人が大キライなのかもしれない、などと思ってしまいます。
今回の事件は、〔国際観光都市〕をうたう北海道小樽市内の温泉施設2軒が、「Japanese only」の看板を掲げ続けている、というものです。
小樽港をもつ同市で暮らす外国人は34ヵ国315人で、1年間に同港に寄港するロシア人は約3万人。
まさに〔国際都市〕なのですが、温泉施設を利用するロシア人が飲酒入浴をしたり、泡だらけで浴槽に入ったりするため、日本人客が激減。
経営危機に陥り、「このままでは閉店に追い込まれる…やむにやまれぬ対応策だ」というのが施設側の言い分です。
しかし「人種差別もはなはだしい」と行政にも市民団体や外国人からの抗議が殺到。
会議などを開催して、ロシア語ほか数か国語で入浴のマナーを教える看板を設置すること、などを依頼したようですが、施設側は死活問題だ」と、方針を変えようとはしませんでした。
この問題は、アメリカの有力紙も〔日本の人種差別〕として大きく報道することにもなり、地元の大学がシンポジウムを開催するなど、いやはやタイヘンな〔騒動〕にまで発展してしまいました。
ちなみに、施設側が利用者にアンケートをしたところ、〔外国人との混浴〕は賛否が真っ二つに分かれたともいいます。
共同浴場に外国人が来れば、外国人を観察する絶好のチャンス。
神奈川県の横須賀市で育った私などは、アメリカ兵の裸を横目で見ながら、「こんなゴツイ人たちと戦争をしたのか?」と幼ゴコロで、日本の無謀を感じた一人でした。
以前、兵庫県の入浴介護ボランティアグループには外国人も参加していて、爽やかな話題を提供してくれました。
それと比べると、〔入浴〕への対応が天と地ほどの違いを感じます。
共同入浴は、自由と平等の精神を育むだけでなく、〔国際平和〕を築いてゆくインパクトもあるはずです。
〔グローバリゼーション〕などという言葉の泡を付けて酔っているだけでは、新世紀が心もとない気がします。
(露)
※発行当時の原稿のまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。
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