『入浴福祉新聞 第103号』(平成20(2008)年1月10日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
鹿児島大で良好な成果が得られている
慢性心不全を改善する低温乾式サウナ
心機能が低下して末梢血管への酸素供給も思わしくなくなる慢性心不全は、運動も制限されるなど、心臓の末期的疾患とされるほど重い病気です。
最近は多くの薬剤が開発されてはいるものの、驚くような効果は得られていないのが現実のようです。
そのため、非薬物療法の研究を続ける医師もいて、鹿児島大学には、医師と看護師が常駐する「温熱療法室」があり、いわゆるサウナ療法で良好な成果をあげていることで知られてきました。
〔心不全診療の最前線〕を特集した医学誌『成人病と生活習慣病』2007年7月号で、同大学の窪薗琢郎氏と鄭忠和氏が、「心不全の温熱療法~全身均等低温サウナ療法」の全容を簡潔に教えてくれています。
早くから心不全に対する温熱療法を模索してきた同大学の研究チームは、血管を拡張してくれる温熱療法のなかでも、身体に負担をかけない乾式サウナ浴に着目。さまざまな方法を検討した結果、60℃の乾式遠赤外線サウナ室で15分間安静にした後、サウナ室を出てからさらに30分間、毛布にくるまれて安静保温をする手法を開発しました。
この乾式遠赤外線サウナ療法は、温熱による痛覚刺激は受けず、深部体温が約1℃上昇し、約30分の体温上昇が維持できます。しかし、心拍数や血圧、酸素消費量の変化はほとんどみられません。
そうでありながら、こうした温熱刺激を慢性心不全に患者に続けていますと、血管抵抗も低下し、心臓の負荷は軽減されながら、心拍出量は25%ほど増加するとのことで、これまで悪化した症例は1件もなかったそうです。
さらに、心不全をより悪化させて突然死の原因にもなりかねない不整脈の出現率も低くなり、交感神経の活動を抑制して自律神経のバランスも改善できるというのです。
ちなみに、こうした温熱療法を受けた患者は、受けなかった患者に比べて生存率は35%も高くなる成果も得られています。
慢性心不全患者は、負担がかかる浴槽入浴を禁止される場合もあり、悔しい思いをしている患者さんはたくさんいるはずです。安全で快適な低温サウナ療法に取り組んでくれる医師が、もっと全国各地に出てくれるといいのですが…。
※発行当時の原稿のまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。
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