『入浴福祉新聞 第10号』(昭和60(1985)年1月25日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
水と人間 その8
立井 宗興
毎日の入浴で、最近たくさん市販されるようになった“垢取りタオル”を使い、石鹸をたっぷり付けて身体をゴシゴシと洗ってしまう“潔癖症”が増えている。
しかし、現代人の身体はそれほど汚れているだろうか。
汚れやすいのは、衣服におおわれていない顔や手足ぐらいなはずである。
ここは身体のなかで最も敏感に体温調節してくれるので、よく磨いてもかまわないが、そのほかの部分はあまりいいとはいえない。
入浴では、脂肪分の上の汚れを少しとればいいわけで、皮膚を擦り過ぎることは慎むべきである。
人間の皮膚をきれいにする道具で最高のものは何だろうか。
それは人間の素手である。試しに風呂場で、足の汚れを素手と軽石で取ってみるといい。
指と爪で適度に研いだ方が、結局は早く万遍無くでき、また快感すら覚えるだろう。
人間の手は不思議な機能をもっていて、皮膚のほとんどの部分が創傷などで化膿するのに、手の平だけは化膿しない。化膿するのは10万人に1人ぐらいの異常体質者だそうである。
左右の手の平を接近させると発熱現象を起こしているのが分かるはずだし、握手をすると相手の気持が判別できるとまでいわれるほど、手には神秘的な要素が多く、口よりもモノを言う。
昔から人間は、歯が痛い、頭が重い、お腹の調子が悪いとなると、本能的にそこへ手を当ててきた。
すると痛みが和らぐからだ。「医療」のことを「手当」というのもここからきている。
※発行当時の原稿のまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。
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