『入浴福祉新聞 第8号』(昭和59(1984)年7月31日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
水と人間 その6
立井 宗興
「皮膚の老化現象」とは、表面の脂肪が少なくなり、しわが多くなってくることです。
若い人でも、毎日の入浴時に“普通の石鹸”で身体をゴシゴシ洗うと、湯上り後に皮膚がカサカサになり、乾いているのがわかるはずです。
これは一種の皮膚障害で、若い人なら一過性で済むが、皮脂膜が薄くなっている高齢者だとそうもいかない。
皮脂膜を作っている皮脂の約3分の1は酸性脂肪で、正常な皮脂膜とは、とりもなおさず「弱酸性に保たれた皮膚」である。
身体を油膜シートで防備し、しかも酸性にして皮膚を細菌の繁殖から防ぐという自然の摂理を無視してはいけない。
酸性度やアルカリ度を示すpHで皮膚を調べると、男性が4.5~6pH、女性は5~6.5pHで、いずれも弱酸性である。
“身体はアルカリ性”に保たないと病気を起こしがちになるが、この言葉だけを鵜呑みにして皮膚までアルカリ性にしたら、たいへんなことになる。
われわれが日常使っている石鹸は、実はアルカリ性で、これでゴシゴシ洗ってしまうと決して美肌にはならないのである。ましてや表面に脂肪分が少なくなっている老人にはなおさら悪い。
寝たきり老人の身体をゴシゴシ洗ってはいけない、というのはそんな理由からである。
そこで皆さんにぜひ実験をおすすめしたい。
一般に使用しているアルカリ石鹸でまず洗ってみる。翌日は弱酸性石鹸を使ってみる。
後者の方が、皮膚が滑らかであることがわかるはずだ。
※発行当時の原稿のまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。
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