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2020 09.11
本当はほとんどの方が「お風呂好き」 精神科患者への清潔援助をどうする?~『入浴福祉新聞 第102号』より~

 

『入浴福祉新聞 第102号』(平成19(2007)年11月1日発行)より

過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。

発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。

 

本当はほとんどの方が「お風呂好き」

精神科患者への清潔援助をどうする?

オシボリと声かけで手洗い頻度が増加

 

「意欲が減退した精神病棟の患者さんは、周囲の援助がないと、清潔のセルフケアにも無頓着になる」といわれます。

社会復帰と感染症予防のためにも、精神科でももっと清潔ケアに取り組んでほしいところですが、充分とはいえないのが現実ではないでしょうか。

愛媛県の『松山記念病院紀要』第12号(平成17年7月発行)に目をとおしていましたら、同病院の看護課職員による「精神科長期入院患者の手洗い行動の変化」という素晴らしいレポートに出合いました。

同病院には、統合失調症の患者が常時40人ほど入院しています。しかし、看護スタッフはこれまで、感染症防止の観点から患者に手洗いを奨励してきたものの、実施の状況までは注意を払ってきませんでした。患者の多くが、手洗いができないか、できても不充分なままで終え、汚れたタオルで拭いて済ませていたのです。

そこで手洗いをシッカリと行っていただくため、食事前にオシボリを患者に配りながら、「食事前なので手を綺麗にしましょう」と呼びかけることにしたそうです。

当初は、オシボリで何をすべきか判らない患者がいたり、オシボリに関心すら持たない患者もいましたが、2ヵ月間、オシボリ配付と手洗いの声かけを続けた結果、食事前や洗面時に手洗いをするようになった患者が2倍になったといいます。

ちょっとした援助が患者の心と行動の変化をもたらすいい事例で、介護の世界でも見習いたい工夫です。

本紙では再三述べてきましたが、〔精神科の患者に対する入浴の効果〕を検討した報告は、専門誌や学会誌でもほとんど見当たりません。

精神科医の怠慢のように思えますが、平成8年に開かれた日本精神科看護学会で、熊本県にある内藤病院のスタッフが、「入浴に関する一考察」と題して発表したことがあります。

統合失調症などで同病院に入院していて大浴場を使用している男女28名を対象に〔入浴に関する意識調査〕を行い、あわせてスタッフには〔入院患者の入浴援助についての反省点〕を列記してもらったのです。

すると、64%の入院患者が「お風呂は好き」と答え、「嫌い」は14%、無回答が22%でした。残念ながら、患者からの入浴に関する改善点や要望はありませんでした。

しかし、スタッフからは、プライバシーが保たれていない…入浴は大変と思い込んでいる…患者が自分でできることも介助している…患者をせかしている…入浴時にリラックスできない…暗いイメージがある…脱衣所や浴室の保温が悪い…入浴後の西洋援助をしていない…といった声が集まったのです。

こうした反省点をふまえ、患者の入浴自立度を把握し、必要な場面だけ介助する…時間がかかる患者は先に入浴してもらう…ドアの開閉を片側だけにしてノレンをかける…音楽を流す…柚子湯や菖蒲湯などで季節感を出す…ドライヤーで整髪し、女性には化粧水の使用を促す…などを試みたそうです。

すると、見守りの場面ができてスタッフに余裕が生じ…患者の依存心が減って自立度が高まり…裸のまま順番を待つことがなくなり…明るいポップス系BGMが入浴時の患者の表情を明るくし…菖蒲を手にしながらスタッフと会話がはずむようになり…ドライヤーでの整髪希望者がどっと増え…ほとんどの女性患者が穏やかな表情で化粧水をつけるようになった…などなど、まるで入浴の雰囲気が違ったものになったそうです。

こうした改善効果を実感した同病院のスタッフは、「入浴の意味を理解し、これからも患者にとって心の底から安らぐ時間となるよう心がけ、機能を低下させないような援助をしていきたい」と報告を締めくくっています。

 

 

 

※発行当時の原稿のまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。

 

 

 

 

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