『入浴福祉新聞 第120号』(平成24(2012)年4月1日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。 発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。 |
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前照灯
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この春、入浴文化をテーマにした映画が公開される。タイトルは「テルマエ・ロマエ」。
ラテン語で「ローマの浴場」の意味。舞台は、西暦130年代の古代ローマ。
主人公の浴場設計技師ルシウスは生真面目な根っからの仕事人で、あまりの堅物さに失業の憂き目にあう。気晴らしに出かけた公衆浴場で、ふとしたことで湯中に潜り、溺れかけもがいて水面に出たら、そこは「平たい顔族」が集う浴場だった。
この「平たい顔族」は現代日本人であり、つまり古代ローマの浴場から現代日本の銭湯にルシウスはタイムスリップしてしまったわけだ。
旺盛な好奇心と学習意欲からルシウスは現代日本の様々な浴湯機能や風呂に関連する物品を驚きつつも分析。再び戻った古代ローマの浴場にそのアイディアを反映させ一躍ときの人となる。
話としては、当然辻褄の合わないことが多々あるが、風呂をこよなく愛し仕事に取り組む主人公の七転八倒振りがなかなか見もののようである。
詳しくは映画館へ足をお運びいただきたいが、公衆浴場を「健康を得る場所」「社交の場所」として活用した古代ローマの考えは、現在の日本人の入浴観に通じるものがある。
この時空を隔てた2つの世界をつないで退避したアイディアには、感服した。
元々ヤマザキマリ氏による短編漫画が原作で、イタリア人の夫君に触発されてこの作品が生まれたらしい。
いろいろな偶然があったにせよ日本文化を海外から見つめなおし「テルマエ・ロマエ」ができた。その単行本ンお各話の間に風呂に関する歴史資料や海外体験談が挿話されている。これも一読の価値あり。
「ローマは一日にして成らず」とは「大事業は長い間の努力なしには完成されない」の意味。求められ長く続いたものには、何らかの人事を超えた意味が含まれているものである。
過去を振り返り、思考を温め「神が与えたもうた湯の力」を再考する春である。
※発行当時の原稿のまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。
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