『入浴福祉新聞 第76号』(平成13(2001)年7月1日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
入浴時に誰もが発する吐息は重要な心身現象
サービス評価の目安にならないでしょうか
皆さま方は入浴した時、どんな吐息を発しますか?
「ハー」「ウォー」「ウーン」「ウッフー」「アー」「フーウ」などなど、人によってさまざまでしょうが、この〔入浴時の吐息〕はとても重要な生理現象といわれています。
1月4日付の朝日新聞に、ドイツ文学者で温泉研究家の池内紀氏と俳人の黛まどかさんの〔温泉対談〕が掲載されていて、この吐息の話も登場していました。また、4月に出版された『温泉で、なぜ人は気持ちよくなるのか』(講談社α新書)で、著者の石川理夫氏も、吐息について書かれていて、興味をあらたにしました。
池内氏によると、〔入浴吐息〕は、湯が身体にしみて生き返った感覚から発する声で、ヨーロッパ人もやはり湯の快楽を味わうと「オーウ」といった声を出し、世界共通の現象なのだそうです。
一方の石川氏は、〔入浴吐息〕とは、入浴が呼吸中枢を刺激して、反射指令で息を吐きだす現象だが、〔本当にいいお湯〕でなければ、〔ホンモノの入浴吐息〕は出ないと強調しています。
逆にいえば、この〔入浴吐息〕こそが、湯に五感全体が感応しているか否かの尺度にもなる、との講釈をしています。しかも、入浴で心身の充足感が得られてゆくと、この呼吸や吐息に微妙な変化が現れる、とも言うのです。
残念ながら、〔入浴時の吐息に関する心身医学的研究〕などはまだ行われていませんが、普段は黙りこくっている要介護者でも、入浴すると必ず吐息をもらすはずです。入浴介護ごとに、利用者の〔吐息の質〕を感じながら、今日の吐息から察すると、最高のお湯と介護を提供できた…昨日は80点ぐらいの吐息だった…といったサービス評価をしてみるのも、いいかも知れません。
※発行当時の原稿のまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。
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