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2020 10.30
入浴事故の警鐘は15年前の日本救急医学会でされていた~『入浴福祉新聞 第107号』より~

 

『入浴福祉新聞 第107号』(平成21(2009)年1月1日発行)より

過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。

発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。

 

入浴事故の警鐘は15年前の日本救急医学会でされていた

しかし反応は冷やかだった

 

何事もかなり早くから提言したり、警鐘を鳴らす先見の人がいます。時代を先取りするフロンティアの人もいます。

しかしそうした先駆者のアプローチは、たとえ関係者であっても、なかなか理解できず、当人は苦渋を味わうものです。

在宅で寝たきり状態にあり、入浴がままならない方々に移動入浴車で入浴介護を!と全国の福祉関係者を説得して歩いたデベログループ創業者である立井宗興会長も、「寝たきりにお風呂ですか!?」と嘲笑されたり変人扱いされたそうです。

ソニーの『ウォークマン』も、花王の『バブ』も、役員会で「こんなモン売れるか!」と担当者はケチョンケチョンにけなされた、との逸話が残っています。

さて、高齢者の入浴事故を最も早く学術的なテーマとして取り上げられたのは、何と平成5年に広島で開催された『第21回日本救急医学会総会』だったようです。

当時、東京都立墨東病院救命救急センターに勤務していた堤晴彦医師らが、「入浴中に心肺停止となったODA(内発性突然死)症例の検討」を発表したのです。

同センターに救急センターに救急搬送された入浴事故者24名(男性7割/平均年齢61歳)を検証したところ、虚血性心不全の38%とクモ膜下出血の25%が目立ったこと、約13%は救急蘇生したものの24時下院以内に全員が死亡した、といった看過できない事故である旨を発表したのです。

しかし、そうした発表をしても、学会参加者の反応はかなり冷やかで、「次はトイレでのODA研究ですか?」と揶揄するような言葉を投げかけた医師もいたそうです。

発表をした堤医師はその後、埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センター教授となりましたが、平成19年12月発行の『臨床と研究』(九州大学医学部内大道學館出版部)の特集「冬季における高齢者の診療」のなかで、「高齢者の入浴」を寄稿していて、入浴事故に至る危険因子…発生頻度…入浴死を誘引する疾患…ほかを解説しながら、微温半身浴…入浴環境の温度差解消…水分摂取など重要注意事項を整理して教えてくれています。

血圧変動を起こしやすい冬季は、入浴事故の危険シーズンでもあります。とくに、浴室介護には厳重な注意が必要なことは、いまでは介護の常識となりました。訪問入浴介護において入浴する部屋の度に充分な注意をお願いいたします。

 

※発行当時の原稿のまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。

 

 

 

 

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