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2020 06.19
〔温泉浪費〕やめて現代版湯治を考えよう~『入浴福祉新聞 第87号』より~

 

『入浴福祉新聞 第87号』(平成16(2004)年2月1日発行)より

過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。

発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。

 

 

病気予防の考えが生活に浸透していた江戸時代の人々

源泉の特色と効能を熟知し頻繁に湯治に出かけていた

〔温泉浪費〕やめて現代版湯治を考えよう

泉質と温泉地の詳細情報入手し滞在型を

 

操作が複雑でも至難な治療を可能にした医療機器・・・効果テキメンの薬物・・・など医学の発達がますます過激になってきたなかで、治療ミスや薬害が次々と明るみに出て、何か恐怖に似た感覚を持たざるを得ないのが〔現代の医療事情〕かもしれません。

そうした雰囲気のなかでは、昔の治療を見直すことで、〔治療とは何か〕を考えるきっかけになるはずです。

この11月に出版された『病の世相史~江戸の医療事情』(田中圭一著/ちくま新書/680円)は、史料を丹念に調べながら、意外に長生きした人も多かった江戸時代の医療を解き明かしています。

私たちは、「江戸時代の貧しい農民は、病気になっても医者に診てもらえず、ただ死ぬのを待つばかりでした」といった教え方をされてきました。しかし、この近世史家は真っ向から「それは誤り」というのです。

江戸時代の人々は、よく働きよく遊びながら、健康への関心も強く、日頃から薬草を愛用し・・・農閑期などに湯治に出かけ・・・鍼・灸・按摩も活用し・・・修験者のオマジナイで自信を与えられ・・・などなど、あらゆる手段を駆使して病気にならないような生活を送っていた・・・

つまり、まずは〔病気予防〕が生活のなかに浸透していたのである・・・もし病気になっても、医者が意外と多かったし、貧しいものでも豊かな者が協力して治療を支援するのが当然と考えていた・・・と強調しているのです。

こうした視点からまとめられた本書の〔温泉〕の章を読んでみますと、本当に〔目からウロコ〕の気分にさせられます。

新潟の佐渡には温泉はなかったので、佐渡の人たちは湯治をしなかったか?

決してそうではなく、越後や出羽や上州などへ頻繁に出かけて、一週間以上は滞在する湯治をしていた・・・しかも、どこそこの温泉は何の病気によく効く、といった泉質の効能も熟知していて、その人に適した湯治場を教えられる達人もいた・・・これは佐渡だけの特色ではなく、どこの温泉は何に効くといったことは全国的に知られていた・・・

食事が美味しくなり、便が出るようになったのは温泉が効いた証拠、といった解説書も出されたり、温泉であちこちの痛みが消えていったとの話が、日記などにたくさん残されている・・・と著者は述べているのです。

湯治も含めて、江戸時代は自然治癒力を高める医療が中心でしたが、明治維新期にヨーロッパ文明が押し寄せ、第二次世界大戦後にはアメリカ文明が列島の隅々までを覆うようになると、日本古来の〔予防医学〕は排除されてしまいました。

しかし、21世紀を迎えたいま、ウォーキングや水泳が脚光を浴び、健康食品や漢方薬の人気が急上昇しています。もしかしたらこれは、日本人が江戸時代までに培ってきた〔予防医療〕を、無意識に重要視し始めたのかもしれません。

〔温泉指南本〕が息切れすることなく、毎月のように出されているのも、そうした世相の反映でしょう。

『病いの世相史』と同じく11月に、『温泉法則』が出版されました。

著者の石川氏は、『温泉で、なぜ人は気持ちよくなるのか』など多数の著作がある温泉評論家。この新刊も、温泉本来の活用法である〔湯治〕の視点でまとめられています。

バブル経済で、日本の温泉もバブルに浮かされ、温泉旅館やホテルは次々と豪華施設を競いながら、温泉の原点を忘れてゆきました。

温泉を何度も再利用する〔循環式温泉〕や、水道水をたっぷりと源泉に加える〔水割り温泉〕が当たり前になり、その結果、レジオネラ菌による集団感染事件が頻発する始末となったのです。

こうした〔まがいもの温泉〕が、近年はたくさんの温泉愛好家から批判されるなかでも、最近は地底1km2kmを掘って地下水をくみ上げただけの温泉レジャー施設も流行する気配すら生じています。

しかし、この石川氏も、地下から自然に湧き出ている場所に簡素な湯坪が造られた・・・そして雨露をしのぐ小屋が掛けられ・・・そこに健康を願ったり病気に悩む人々が集まり・・・やがて周辺にお店や滞在できる宿ができていった・・・といった温泉の原風景にこだわるのです。ところがこうした原風景は、現在ではほとんど見ることができません。

温泉の原点は、その湧き出ている源泉の質にあるわけですが、残念ながら日本の『温泉法』は、温泉水1ℓに所定の19物質のうち一種類でも想定量以上が含まれていれば温泉と認められ、所定の溶解物質が少量でも、摂氏25℃以上なら温泉とされてしまうのです。

これでは地下温水もみんな温泉となってしまうため、「鉱泉分析法指針」による〔狭義の温泉〕が定められたり、「療養泉」という概念があったりするのですが、素人には頭が混乱するだけで、判然としません。情報開示が時代の流れとはいえ、源泉の質・量・温度などを正直に詳しく伝えている温泉は少ないためなおさらです。

そうした事情があるため、まずは環境省が指定している「国民保養温泉地」(2003年時点で全国91カ所)と、このうちとりわけ療養効果が高いとされる「国民保健温泉地」(2003年時点で全国21カ所)を中心に〔現代版の湯治〕を考えるよう著者は助言しています。

そして、温泉を健康維持や病気予防に活用するためには、まず自分自身が行ってみたい温泉の詳しいカルテを作成してみること・・・旅の情報メディアや豪華パンフレットに惑わされることなく、温泉分析書を送ってくれるなど、源泉の情報をしっかりと教えてくれる宿を選ぶこと・・・

せめて2泊3日ぐらいの滞在を計画すること・・・歴史が古く、谷間や渓流沿いにあり、団体客はとらないような一軒宿を選ぶこと・・・自分の肌に合い、五感を刺激してくれる温泉地を選ぶこと・・・などなど、温泉選びの法則をキメ細かく教えてくれています。

「たかが温泉」などと考えて〔温泉を浪費〕するのはそろそろやめて、江戸時代の人々のように、しっかりと温泉を健康に役立てたいものです。

 

 

※発行当時の原稿のまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。

 

 

 

 

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