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2020 06.26
[被災者の早期入浴援助]も防災計画に~『入浴福祉新聞 第59号』より~
 従事者向け

 

『入浴福祉新聞 第59号』(平成9(1997)年3月1日発行)より

過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。

発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。

 

 

「阪神大震災」から二年以上が経過

[被災者の早期入浴援助]も防災計画に

自治体が公衆浴場組合と災害時協力締結する動き

 

 

 

阪神淡路大震災から二年以上が経過した。道路や鉄道は復旧したものの、〔災害被害者福祉制度〕が創設されないまま、現在でも7万人近くが仮設住宅で暮らしているという。そこでは、誰にも看とられずに死んでゆく〔高齢者の孤独死〕や、中年者の自殺もあとを絶たない。この戦後最大の衝撃的な体験を風化させず、永続的な支援をしてゆきたいものだ。

 

震災以来、全国の自治体では「防災計画の見直し」をせまられ、とりわけ、いつ巨大地震に襲われても不思議ではない、といわれる関東地方の自治体では、地元企業や団体、住民と一体となった防災体制の強化に乗り出している。

その〔災害時対策〕に欠かせないのが〔入浴〕だが、阪神大地震では、自衛隊の特殊浴槽や救援に駆け付けた各地の移動入浴車をはじめ、地元や周辺地域の公衆浴場や健康ランドが、被災者の衛生面の確保だけでなく、〔精神的な癒し〕の面での重要な役割を果たした。

 

実際、被災後になかなか入浴の機会が得られなかった被災者ほど、食欲不振や風邪気味、不眠や頭痛、便秘や動悸、などの自覚症状を訴え続ける人が多かった、との結果を(財)日本健康開発財団が報告している。〔入浴の効果〕は、被災時にも凄いものがあるのだ。

 

そんなこともあって、関東地方の自治体の一部では、地元の公衆浴場組合と「災害時の被災者入浴援助協定」を結ぶ動きも出てきた。

神奈川県でも昨年の秋、衛生局と関係団体の役員らで、災害時環境衛生対策策定委員会を設置。給水、埋葬・火葬、動物救護、そして入浴機会の確保、といった側面で検討が続けられ、この年度末には基本的な報告書がまとまる予定という。

実は、神奈川県公衆浴場業環境衛生同業組合の有志グループでは、阪神大震災の発生後に、現地調査を実施。公衆浴場の災害状況、災害時に公衆浴場が果たせる役割、緊急時の問題点、などを研究したことがある。

 

阪神大震災時によって、神戸市内183軒の公衆浴場のうち、3軒は全焼、31軒が全壊、51軒が半壊したものの、被害を免れた約80軒の公衆浴場は、ライフラインが復興するなか、徐々に営業を再開。入浴を待ち焦がれていた被災者が殺到する一方、伝言板で救援物資の配布予定を被災者に知らせたり、被災者が情報交換をしたりなどの拠点として、素晴らしい威力を発揮したことはマスコミ報道などで記憶に新しい。

 

やはり住宅街の中心にある公衆浴場は〔街の重要な公共施設〕なのである。

 

神奈川県でも、そうした点に着目したわけだが、県の動きに呼応して、神奈川県の浴場組合では、県内443軒を対象に、施設概要調査に着手。各公衆浴場が設置している貯水タンクの容量、地下水利用の有無とそのタンク容量、使用燃料、などを把握して、防災面で公衆浴場がどう役立つのか、また災害時に役立つ施設にするには、どう施設を改善すべきか、などを検討することになった。

 

公衆浴場は、小さいところでも敷地が100坪、広いところでは200坪もある。そして建物は65坪が平均で、脱衣所も広い、という利点があげられる。

当然、一度に大勢の被災者が入浴できるのだが、巨大な貯水タンクを保持していることも頼りになる存在だ。大きな公衆浴場では10トンの貯水タンクがあり、また浴槽にも5トンから10トンが貯えられる。入浴だけでなく、飲料水や生活用水を供給してゆく拠点にもできるのである。

 

こうした利点を震災時に発揮するためにも、建物や貯水タンクの耐震化をはじめ、自家発電設備の導入といった課題も多いのだが、各自治体による詳細な防災計画がまとまりつつあるなか、公衆浴場を防災面でどう整備してゆくのか。行政の積極的な取り組みが期待されているようだ。

 

 

 

※発行当時の原稿をそのまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。

 

 

 

 

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