『入浴福祉新聞 第70号』(平成11(1999)年12月1日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
〔介護保険〕で隠されてしまった?元気高齢者の存在
人生の熟達者の知力が生かせる社会変革も緊急課題
来年度から施行される介護保険に関する話題が、毎日のようにメディアを賑わしています。そのため〔高齢社会の問題〕は、〔要介護高齢者の問題〕だけのような錯覚をいだいてしまう昨今です。
むろん要介護高齢者対策の充実は、緊急かつ最大の課題ですが、けっこう自立している…あるいは、かなり心身とも恵まれていて健康…といった高齢者の存在をけっして忘れてはなりません。
東京都老人総合研究所が行っている有名な研究に、東京都小金井市の高齢者を対象とした「長期追跡調査」があります。
この8月3日付の『朝日新聞』でも、この追跡調査を担当してきた同所の柴田博副所長(日本入浴福祉研究会理事)を取材。「老いを解く」「最後まで健康・自立」「知力伸び続ける」「残った力生かせる社会へ」といった記事を掲載していました。
たしかに〔老化〕はすべての人に起きる現象で、歳をとればカラダ全体が縮み、免疫力や適応力などは低下してゆきます。
しかし、柴田副所長らの研究では、人間は生涯にわたって発達する存在で、昨日低下は死の直前にガクッと落ちることがハッキリしてきたそうです。
つまり、ほとんどの高齢者が、歩行…食事…トイレ…衣服の着脱…などは死の直前まで自立できるというのです。要介護高齢者は全体のわずか5%ぐらいで、何らかの手助けを必要とする人でも20%しかいません。反対に、50%の高齢者はまずまずの自立度。25%の高齢者は、心身ともにかなり元気なのだそうです。
また、最近の研究では、新しい世代の高齢者の〔老化〕は遅くなる傾向にあり、70歳でも心身ともに健康といえる人が確実に増加してきました。
とりわけ注目されるのは、高齢者の知的な能力で、総合判断力などは、歳をとるほど高くなる、といった傾向が明確になってきたことです。
そうしたことを考えますとやはり、高齢者に最適な仕事や、キャリアを活用したボランティア活動…などがますます重要なってきます。
21世紀の日本は、国民の3分の1が高齢者という時代を迎えます。〔地価社会〕から〔知価社会〕へと転換することが、21世紀最大課題、といわれるのも、その背景と基盤に〔頼りになれる高齢者の知力〕があるためでしょう。介護保険による福祉の充実と並行して、〔高齢者の知力を生かせる社会づくり〕も急ぐ必要を痛感します。
※発行当時の原稿をそのまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。
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