『入浴福祉新聞 第65号』(平成10(1998)年9月1日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
1人ひとりを大切にする入浴介護をしてますか
[福祉はドラマ]といわれます。主人公(対象者)を中心に、家族や専門家が喜怒哀楽を繰り広げるわけですが、とりわけ、訪問入浴介護のように、対象者の家庭にあがりこみ、裸になっていただくような福祉では、対象者の過去・現在・未来が赤裸々になり、[物語]も生まれやすくなるのではないでしょうか。
訪問入浴介護は、[ハコモノ福祉]とは違って、そうした対象者1人ひとりの物語を書き残すことが、後世への遺産ともなります。このほど、デベロ介護センターのスタッフが、毎日の業務のなかで[思うコト]を綴ってくれました。皆様の職場でも、感じたことをそのままノートなどに書き残しておいたらどうでしょうか。きっと自分自身にも役立ち、これから福祉の世界に入ってくる若い世代にも参考になると思います。
★戦争中はお風呂になかなか入れなかったヨ★
難聴のため、会話が難しい男性Aさんがいます。しかし、気分の良い日には、[戦争の話]をしてくれます。
家庭の介護者は忙しくて、なかなか[戦争の話]のお相手ができないようですから、私たちの訪問を楽しみにしていて、[戦争の話]をする、というわけです。
「戦争中はお風呂にはなかなかはいれなかったヨ・・・いまはこんなカラダになっても、お風呂のお世話をしてくれるんだからネー・・・何よりの御馳走です」とAさんが言うように、皆さんも御馳走を運ぶ気持ちで訪問しましょう。
それにしても、家庭で介護をされている方々も高齢化していて、疲れがとれない・・・メマイがする・・・といった訴えをよくされます。家庭介護者は、診察を受けるような時間もないようですから、私たちはときどき家庭介護者のバイタルサインもチェックして、いろいろと助言もさせていただいています。
(S・M)
★「最期の時」が来ても入浴はお願いしますヨ!★
平成6年にALSを発病した50代の女性を、平成9年から訪問しています。
入浴介護のほかに、訪問看護やリハビリも利用されていますが、26歳の娘さんを中心に、その女性のご主人と長男さんが、文字通り家族一丸となってお世話をしています。進行が遅いとはいえ、ALSは確実に機能障害を重くしてゆく、とされていますので、この家族は主治医も交えて、終身時のことまでじっくりと話し合っているそうです。
「いたずらな延命治療は受けさせたくはない・・・最期まで私たち家族が中心になってできる限りのことをしてゆきます・・・でも、最期の時が来ても、絶対に入浴だけはお願いしますヨ」
と言われて、ジーンときてしまいました。
「安全で、快適で、安心できる入浴介護」をモットーに私たちは訪問しているわけですが、ここ数年、かなり重度だったり、末期にある在宅患者さんの入浴介護が増えてきました。
こうしたケースに対して、本人はもちろん、家族と、どんな接し方をしてゆくのがいいのか。皆さま方の体験談をもっと聞きたいと思っています。
(G・O)
※発行当時の原稿をそのまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。
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