『入浴福祉新聞 第90号』(平成16(2004)年11月15日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
高齢者も女性はお化粧!男性はヒゲ剃り
①
美容をはじめ、音楽やペット、園芸や絵画などを、福祉や保健の視点から見直して、要介護者の心身の健康に役立てようとの動きが広がっている。
ふだん私たちが何気なく行っている入浴を、福祉としてとらえ直したのが〔入浴福祉〕で、いわばこうした発想の大先輩だ。
〔入浴福祉〕も30年を経た今日では、当初では信じられないほど、重度の対象者を安全に入浴を提供できるほど〔進化〕してきた。
〔美容福祉〕〔音楽療法〕〔アニマルセラピー〕〔園芸療法〕と呼ばれているこうした新しい試みでも、手法が深まってゆくことが期待されている。
〔美容福祉〕の分野で熱心なのが、化粧品大手の資生堂。社会貢献事業として、高齢者や障害者の施設を専門スタッフが訪問して、メーキャップ教室を開催するなど、称賛したい取り組みを続けている。
歳をとっても、女性はお化粧を、男性はヒゲ剃りを、そして男女とも整髪とお洒落を、忘れたくないもの。心身ともに健康な方は、やはり身だしなみがキチンとしている。
こうした〔美容福祉〕の考えを普及させた第一人者が、全国に美容室をチェーン展開するなどで活躍した山野愛子さん(故人)と言われている。
現在は、ご子息の山野正義氏が〔山野グループ〕を継承されていて、その正義氏のインタビュー記事が、老人保健施設の専門誌『老健』2004年2月号に掲載されていて、興味深く読ませていただいた。
山野愛子さんは、第一線を退いて86歳で他界するまで、美容ボランティアとして各地の高齢者講座や施設で講演や実技指導を行ってきた。
施設では、パジャマ姿で自分の話を聴きに来る入居者に、着替えてくるよう促し、いわゆる〔施設カット〕のヘアスタイルを批判し、女性にはその人の個性にあった化粧品を勧め、男性には顔のマッサージにもなるからとヒゲ剃りを日課にするよう強く助言してきたとか。
化粧を始めたらオムツをしなくなった…痴呆高齢者に身だしなみに関心をもってもらったら精神的な活力が出てきた…施設のロビーに等身大の鏡を取り付けたら、入居者が何となく元気になった…といったエピソードにはこと欠かない。
山野正義氏は、「美容には、介護が必要になってからの効果はもちろん、要介護にならない効果もあるはず。と同時に、ケアをする専門家も、だらしない恰好と髪型では、相手に可能な限りイキイキと暮らしていただく職業的役割は果たせません」とも強調している。
さて皆さんは、自分自身の理美容と身だしなみに気をつかって仕事をしてますか?
※発行当時の原稿をそのまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。