『入浴福祉新聞 第55号』(平成8(1996)年3月15日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
[自尊心介護]でココロもカラダもプラス方向へ
入浴は[いい思い出]を蘇らせる絶好のチャンス
入浴は、内臓の働き活性化させ、便通も好転する。
ために、「対象者が入浴介護を受けている最中に、出てしまった」との話は珍しくない。その時に介護専門家が対応の仕方を誤ると、対象者は深く傷つき、「もう入浴介護なんて受けたくない」ともなりかねないようだ。
介護の質の向上…一人ひとりを大切にする介護…自立を促すための介護…と叫ばれているが、こうした姿勢をひっくるめて[自尊心介護]なる概念が登場してきた。
対象者のココロを傷つけてしまえば、自信を喪失して自立への意欲も減退する。介護専門家との関係も歪んでしまうだろう。その結果、介護はますます困難になる、という悪循環が発生する。
人は誰もが〔誇り〕をもって生きている。自分ひとりでは動けなくなった高齢者にも〔誇り〕はある。過ぎた日の栄誉や成功、称賛された出来事、いい思い出、などを源泉にしながら、懸命に生き抜こう、困難を乗り越えよう、元気になろう、としているのである。
それが〔自尊心〕というものだ。もし、それが踏みにじられると、イノチの活力は失われる。治る病気も治らなくなるだろう。自尊心を踏みにじる行為とは、羞恥心を無視したり…劣等意識を植えつけたり…といったことである。
〔自尊心〕や〔誇り〕とは、どんな歳の人でも〔過去の成功体験〕と言い換えてもいいだろう。
となると、〔高齢者の自尊心介護〕でも大切になってくるのが〔いい思い出〕だ。
〔いい思い出〕をたくさん引き出すことによって、介護対象者のココロもカラダも断然違ってくるのである。
対象者が入浴で気分が爽快になっている時こそ最大のチャンスである。
〔いい思い出〕を脳に蘇らせる入浴介護をしてほしいものである。
※発行当時の原稿をそのまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。
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