『入浴福祉新聞 第57号』(平成8(1996)年9月1日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
僕たちを一生懸命育ててくれたんだから 胸を張ってお世話を受ければいいんだヨ
Yさんの介護の主役はお孫さん
89歳の女性Yさんの訪問入浴サービスを担当することになりました。Yさんのご家庭は、娘さんと孫夫婦、それに曾孫2人と同居している3世帯家族です。食事もYさんが車椅子を使って、家族一緒にとるとのことで、仲むつまじいご家族です。
お話をいろいろと訊かせていただいているうちに、驚きました。
娘さんのご夫婦はずっと共働きしてきたこともあって、お孫さんが介護の主役になってきたのです。
朝晩、ポータブルトイレの処理を嫌な顔ひとつしないで行い、しかも、ベッドの柵やトイレまでの手すりを作ってくれたのはお孫さんだそうです。もう1人のお孫さんも、一週間に1回はYさんの好物を手作りして訪問してくれるといいます。
さて、Yさんの健康状態をチェックして、「大丈夫ですね…お風呂に入れますよ…」と声をかけると、Yさんは、「皆さんにお世話をかけちゃってスミマセン」と、遠慮がちです。
「そんなことはないですヨ…」と笑顔で語りかえると、Yさんは、「孫にも言われたんですヨ…世話をしてもらっても、小さくなることはないんだヨ…いままで僕たちを育ててくれたんだから、胸をはって世話を受ければいいんだヨ…ってね」と嬉しそうに語ってくれました。
このお孫さんの言葉は、Yさんが自分の子供や孫のために、一生懸命生きてきた何よりの証拠なのです。そして、この一言が、Yさんをどんなに勇気づけ安心させたことでしょうか。
入浴をはじめ在宅介護を受ける方々は、私たちの大先輩です。敗戦で荒廃した日本を建て直し築き上げてきた人たちです。
ご本人やご家族が、少しでも幸せを感じてほしい、との願いで訪問福祉に従事していますと、自分のココロまでが満たされるようで、いい気分になれるのではないでしょうか。
これからも、私は自分の役割を自覚しながら研鑽に努め、一人でも多くの人が安心して生活ができるよう、充実したサービスを提供していきたいと思っています。
※発行当時の原稿をそのまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。
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