『入浴福祉新聞 第14号』(昭和61(1986)年1月31日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
福祉と医療の一体化を
岩手県一関市福祉事務所 看護婦 福井 マサ子
在宅介護に日夜携わっている家族の切実な願いを受け止め、一関市が入浴事業を始めて10年を経過しました。
この間、利用者は256人に達しました。
対象者の主な疾患はやはり脳卒中後遺症ですが、最近は痴ほう症が目立っています。大半が5年以上の寝たきりで、なかには17年も病床生活を余儀なくされている方もいます。
本人の苦しみはもちろん、家族の苦労も大変ですが、それに耐え抜いてきた老妻やお嫁さんの姿に接すると、愛の深さを感ぜずにはいられません。
利用者のなかには、本人と家族の努力で歩行可能となり、浴室入浴に復帰した人もいて、私たちは“入浴車の卒業生”として大喜びします。
また、共働きの家庭で垂れ流しのままお留守番せざるを得なかったお年寄りは、熱心な施設のおかげで1ヵ月もせずに単独歩行が可能となり、いかにリハビリが重要かを思い知らされます。
しかし、在宅ねたきり老人は今後もっと増えるといわれるのに、リハビリの体制はほとんどできていません。
医師の往診は少なく、退院したが最後、生活への復帰行動が閉ざされてしまいます。
リハビリの行われない病院もあり、状態が悪化して退院するケースもあるのです。
現状では、ねたきりを続けてしまう条件があまりに多く、福祉と医療を一体化させた在宅ケア―に、早く本腰を入れるべきでしょう。
そして、毎日休む間もなく介護している家族の健康を守る保健活動も、これに組み入れるべきと思います。
入浴事業は、この3つを媒介させる役割と機能をもっています。
入浴車の訪問によって、家族にやすらぎを、老人には生きる喜びを…そう念じて車を走らせています。
※発行当時の原稿をそのまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。
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