『入浴福祉新聞 第64号』(平成10(1998)年6月1日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
訪問入浴に転職し重度在宅患者の多さに驚く
家庭介護者を元気づける〔ちょっとした会話〕
デベロ介護センター土浦営業所 看護婦 K・M
私は保育園を退職後、デベロ介護センターに入社して、高齢者福祉の仕事に就くという〔180度の転職〕をしました。研修を終えて、対象者家庭を訪問するようになって、まず驚いたのは、医療的な処置を必要とする方がたいへんに多いことでした。
以前なら入浴治療をされていた患者さんが、家庭で暮らすようになった時代の大きな変化に戸惑いましたが、これからはもっと、そうした在宅患者さんが増えてゆくのでしょう。
そうしたご家庭でお世話をしているご家族の苦労は並大抵のことではなく、心身ともに救いを求めている姿に衝撃さえ受けました。
当社が訪問している竜ケ崎市のOさん(84歳)は、肥満性の歩行障害となり、痴呆と鬱病もある対象者です。
そのOさんを介護されているお嫁さんから、「本当によくしていただいて・・・嬉しくて・・・皆さま方の訪問がとても励みになり・・・元気が出てきました・・・」といったお手紙をいただいたことがあります。
私たちが入浴介護で訪問しているなかで、〔ちょっと交わした言葉〕が、お嫁さんには大きな救いになったようなのです。
また、茎崎町のMさん(72歳)は、糖尿病・・・小脳変性症・・・気管切開・・・胃瘻造設・・・バルーン留置・・・褥瘡・・・といった重度対象者です。ほとんど話をしませんし、反応もごくわずかしかありません。
このご家族も、夜間の吸引など、毎日の〔医療的家庭介護〕で、睡眠も充分にとれないようです。
そこで、何気なく「たいへんですが、頑張ってくださいネ」と声をかけたところ、笑顔を浮かべながら、「いやー、介護する人より、介護される方がもっと辛いでしょう・・・カラダは動かず、声を出すこともままならないんですからネ・・・それを考えると介護も苦になりませんヨ」との返事が返ってきたのでした。
看護婦をしていて、こうした言葉を患者さんの家族から聞いたのは、初めてでしたので、とても感動したしだいです。
訪問入浴サービスは、少人数のスタッフが家庭内にじかに入るため、〔個人的な出遭い〕ということを感じます。限られた時間ですが、対象者の疾病や状態を把握するだけでなく、家庭の様子と家族の人間関係をも理解できるようにもなります。
家庭の介護者は、何事も完璧にやろうとして、育児ノイローゼ同様のストレスをため込む方が少なくありません。
私たちは、家庭の全体を理解出来る訪問介護者といいう利点にもっと目を向け、家庭介護者との信頼関係を築き、その訴えを全身で受け止めてゆくことが必要だ、と痛感する昨今です。
※発行当時の原稿をそのまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。
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