『入浴福祉新聞 第2号』(昭和57(1982)年12月15日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
北陸の入浴福祉 雪にも負けず奮闘
加賀温泉郷で有名な石川県は、お風呂好きな県民性もあって日本海側では最も入浴福祉が活発です。
昭和47年に茨城県水戸市で巡回入浴事業がスタートしたのを知った知事さんが、すぐ入浴車の導入を決定し、翌年から県内郡部を所管とする県中央福祉事務所で始められました。
県内の寝たきり老人は約3500人で、昭和52年に県が実施した「寝たきり老人の実態調査」では、入浴していない老人が26%もいて、そのうち33%が入浴車を利用したいと答えたそうです。そのため県では在宅入浴を重視、現在では中央福祉事務所に2台、羽咋鹿島と鳳至珠洲の両福祉事務所、小松市、美川町、加賀市、内浦町、寺井町、柳田町、金沢市、中島町などに各1台ずつ導入され、ほぼ全域をカバーするようになりました。
当初、老人家庭では献血車のような大きな車を想像していたらしく、小さな車で軒先まで来て、座敷で入れるのにビックリ。「便利なものができたものだ」と感心されたようです。
また、石川県の巡回入浴の評判を知って、隣県でも富山県の氷見市、高岡市、婦中町、城端町、福井県の敦賀市などへも広がり、どこも雪に負けずフル回転です。
北陸地方は地元医師会が協力的で、医者が家族を説得して自宅入浴をさせるケースもあるそうです。
寝たきりの当人が「涙を流して感謝してくれる」「入浴日を指折り数えて待っている」といった喜びようは、どの地域も同じですが、注目したいのは看護婦さん、ヘルパーさんもベテランが増え「寝たきりをやめて歩くようになった」老人がかなり出始めていることです。
担当者の声を聞きますと「夏は入浴後に歩行訓練をさせる」「湯がヌルイと言う老人には、これくらいが元気になる温度です、と説得する」「冬だから入浴が欠かせない面がある」「夏は月に2回にしたい」「車に古くから地元にあった湯治場の名を付けて励ましている」等々、入浴福祉本来の目的をよく理解されて取り組んでいるようです。
石川県の昭和56年調査によると、寝たきり老人の三大ニーズは「訪問、入浴、介護」で、巡回入浴はまさに、その願いに添った理想的な福祉といえます。
※発行当時の原稿のまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。
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