『入浴福祉新聞 第33号』(平成2(1990)年12月5日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
夢にまでみた温泉に対象者も大喜び
長野県岡谷市社会福祉協議会 家庭奉仕員 佐々木 久子
岡谷市は長野県のほぼ中央。
諏訪湖の西岸に面し、清らかな湖水と四季を彩る山々に囲まれた風光明媚なところです。
隣には、一年中観光客で賑わう上諏訪温泉があるのですが、なぜか岡谷市にはいままで温泉が出ませんでした。
ところが、市内に住む会社社長のNさんが「岡谷市にも温泉を!」と、夢を賭けて発掘に乗り出したところ、見事!温泉が湧き出たではありませんか。
市内中はもう大騒ぎです。
市役所ではこの温泉を譲り受けることとなり、機能訓練設備のある温泉型宿泊施設を建設。
誰でも利用できる温泉スタンドも設置しました。市民が温泉スタンドにマイカーを乗りつけ、200~300ℓも入る大きなポリタンクに注いで持ち帰り、家庭で温泉を味わう、というわけです。
そこで岡谷市社会福祉協議会でも「在宅の寝たきり高齢者や障害者にも温泉を!」と、今年の4月から“温泉浴介護”を取り入れました。
『24時間テレビ』から移動入浴車の寄贈を受け、「ふれあい号」の入浴サービスが始まって5年。
これまでも大変に喜ばれ、感謝されてきましたが、“温泉浴介護”をするようになってから、ますます好評で、申請者も急増中です。
月2回の入浴介護を受けている約60名の対象者からは、「待ちどおしかったよ」「寝ていて温泉に入れるなんて、夢みたいだよ」「体の痛みがとれてきた」「お風呂が何より楽しみだ」「肌がなめらかになった」などなど、喜びの声をいっぱい聞かされます。
事実、私たち従事者の目からも“温泉浴介護”の効果は素晴らしく、硬直してほとんど動かなかった手足を、動かせるようになった利用者が増えてきたようです。
あるおばあ様は、「私もまだあるけるかねえ…起きて歩いてみようか」といいながら、私たちに支えられながも、何とか浴槽まで行こうとしたではありませんか。この変わりように接した私は、自発的意欲をも呼び戻す、入浴介護に従事できる感激を味わったのでした。
今日もまた、足取り軽く、入浴車のエンジンも会長に、岡谷温泉スタンドへ給湯に行きます。
温泉入浴を楽しみに、指折り数えて待っているおじい様・おばあ様の笑顔を思い浮かべながら…。
※発行当時の原稿をそのまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。
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