『入浴福祉新聞 第65号』(平成10(1998)年9月1日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
介護保険で民間企業の新規参入ますます熱気とか
2000年4月から始まる〔公的介護保険制度〕をひかえて、〔福祉ビジネス〕にさまざまな民間企業の参入が続き、熱気をおびている・・・といったハナシが一般のメディアでも取り上げられるようになりました。
なかでも〔福祉未経験経営者〕が参入しやすい、とされるヘルパー派遣や訪問入浴、福祉用品などの分野で旗揚げが目立っているようです。
メディアのなかには、「巨大に広がる高齢者マーケット」などといった見出しをつけ、日本人が好む〔ショウバイ〕〔ニュービジネスもの〕の記事として仕上げるケースも少なくないため、「この不況の時代に、いい商売らしい」と考える事業者が多いのでしょう。
確かに、訪問入浴サービスの各社は、先発企業を中心に、ここ数年は凄まじい成長ぶりを示しています。
しかし、介護保険制度の本来の目的は、国民全体が介護費用を負担しながら、質も良く量的にも充実した介護をめざすためです。
介護保険でサービスを提供できる事業者は、都道府県が指定することになっていて、さきごろ厚労省では、その指定基準を発表しました。基準案は総じて、民間の零細事業所でも参入しやすいようになっています。
そのため、今年あたりはいっそうの〔福祉企業設立ラッシュ〕になりそうですが、創業当初はかなりの苦労を体験した介護福祉の先発企業の多くはおそらく、介護保険が導入されたからといって、福祉事業を民間ベースで続けるには、そう甘くはない、と昨今の〔ブーム〕を苦々しく思っているのではないでしょうか。
実際、ヘルパー事業の民間受託価格は、1回の派遣で、昼間が1,500円に届かず、深夜でも3,000円以上の契約をしているところは少ないはずです。訪問入浴でも、1人1回の受託料は平均15,000円に達していません。こうした料金では、対象者家庭が離れている農村部では、移動に時間がかかるため、まず採算に乗せるのは不可能なため、民間の介護企業は都市部にかたよってきました。
介護保険になると、民間企業も介護保険報酬を頼りに経営をするわけですが、現在のところ、その報酬金額は定まっていませんし、〔移動時間と料金〕の問題もさほど議論されていないようです。
しかも、新規参入が激しくなり、受託実績を少しでもつくりたいがために、業者間のダンピング合戦も以前より激しくなってしまった、とも囁かれるほどです。
世の中全体の〔安売り競争〕に、介護福祉も巻き込まれてしまえば、サービスの質が低下するのは必至でしょう。過大な保険料負担を国民に強いることなく、なおかつ民間企業が介護で経営ができるようにしてゆくためのキメ細かな具体策を、各企業が考え、提案してゆく必要性を感じる昨今です。
※発行当時の原稿をそのまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。
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