『入浴福祉新聞 第15号』(昭和61(1986)年5月20日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
「入浴ヘルパーさん ありがとう」
山梨県南巨摩郡増穂町 小野 春江
私は昭和56年9月、脳こうそくのため左半身不随となりました。
家庭で医師の手当を受け、回復につとめましたが見込みは薄く、温泉病院に入院。7ヵ月あまり泣きたいほどのリハビリ訓練も受けました。
しかし病に勝てず、半身不自由のまま家庭内自立を目標に退院し、いまは町のリハビリ教室に通っています。
この不自由な体で日常を過すことを考え、家庭内で車いすを利用する方法や入浴のことなどを、家族と話し合いました。そんな折、訪問看護婦さんから入浴車のことを聞き、さっそく申し込みました。
いつもは家族が拭いてくれますが、冬場は寒く、お風呂に連れていかれても、お互いが濡れてすべるので、とても入浴気分は味わえません。巡回入浴車が来て、初めて入浴させていただいたときは、まったく夢の様でした。
以前健康なときに世間話のなかで、入浴車のことを笑いながら聞いたこともありました。
しかし、この入浴気分は、患者でなければとても知ることはできないでしょう。
浴槽も広く、家庭風呂とは違ってゆったり寝たままの姿勢では入れる気分の良さ。ヘルパーさんも何かと面倒を見てくださり、そのうえ町の出来事や種々面白い話をしてくれて、心の交流もあります。短時間でも大変楽しく、患者にしてみれば何よりの贈り物として、次回が待ちどおしいのです。
発病して4年。家族や世間の皆様に御迷惑をかけていますが、入浴の有難さを何と申し上げてよいか。言葉のあらわしようがございません。
「入浴車のヘルパーさん ありがとう」
この一言につきます。
※発行当時の原稿のまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。
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