『入浴福祉新聞 第75号』(平成13(2001)年4月1日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
〔浴室は危険!〕あらためて教えたジェット噴流バス小学生死亡事故
日常的に発生している転倒や火傷 浴槽で溺死する乳幼児毎年100名も
24時間風呂によるレジオネラ菌感染症が大きな問題になったのに続き、今度はジェット噴流バスに入浴していた幼児が溺死する事故が昨秋、福島県と東京都で2件も発生し、あらためて浴室の危険性を教えてくれました。
家庭用のジェット噴流バスが市販され始めたのは1980年代。浴槽内の吸い込み口から取った湯を、ポンプで浴槽の噴出口から気泡にして勢いよく出す単純なシステムですが、マッサージ効果が得られるなどで人気となり、住宅設備メーカーなど各社が次々と参入して、これまで約40万台も売られてきたそうです。
しかし、吸い込み口のパワーはかなり強く、髪の毛が巻き込まれるなど、この10年間で約30件もの事故が報告されてきました。
そうしたなかで、1992年には福岡市の小学1年生の女子が、浴槽に潜って遊んでいる時、吸い込み口に髪の毛を吸い込まれて死亡する事件がすでに起きていたのです。
この時点で、メーカー各社も国も、事態を重要視して対策を講じていれば、今回の死亡事故は防げたかもしれません。
昨秋、福島県と東京都で起きたジェット噴流バスの犠牲者は、7歳と6歳の女の子で、原因は10年前とまったく同じ、髪の毛が吸い込み口にからんだためです。
今回は国も問題視して、さっそく全国のメーカー23社に対して、ジェット噴流を運転中は子供だけで入浴させない…浴槽に潜らない…カバーを外したまま運転させない…など、購入者に利用方法の注意を徹底させ、事故が起こりそうな場合は部品を交換するよう指導しました。
問題は、吸い込み口の構造で、吸い込み口のカバー表面に穴をたくさん設けたものにすれば、吸入力が分散されて、絶対安全とはいえないまでも、安全性はかなり高まるとしています。しかし、部品交換が必要と推測されるジェット噴流バスは全国に12万台から14万台もあるといわれ、徹底されるかどうか、不安はぬぐえません。
高温の湯に長時間、肩までドップリとつかる入浴方法による高齢者の死亡事故が、最近ようやくメディア各社も取り上げるようになってきましたが、実は乳幼児の浴室事故も意外に多く、水死の約6割、100人ぐらいが毎年のように浴槽で溺死しているといわれます。
保護者と一緒に入浴しても、シャンプーや石鹸がなくなったので、浴室から出て取りにいった間に、乳幼児が溺れる可能性もあります。洗濯用や防火用に残し湯をする家庭も多く、しかもドアの開閉が簡単で浴槽の縁が低い、といった場合は、乳幼児が1人で浴室に遊びに入って溺死することもあります。
ある小児科医が、乳幼児をもつ保護者に浴室体験を調査したところ、実に3割強の保護者が「危険な目にあったことがある」と答えたといいます。
溺死しないまでも、洗い場で滑ったり転んだりしてケガや骨折をした…シャワーの湯が急に熱くなって火傷をした…といった事故が全国で日常的に発生しているのが日本です。
高齢者への注意はもちろん、乳幼児がいる家庭を訪問されている介護者はぜひ、〔浴室は危険がいっぱい〕であることを伝えてほしいものです。
※発行当時の原稿のまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。
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