

『入浴福祉新聞 第64号』(平成10(1998)年6月1日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
「末期ガンを宣告され激痛と闘うTさんの訪問入浴に取り組んで」
大分県九重町社会福祉協議会 看護婦 熊谷 京子
☆肺や肝臓にも転移したが病室でも入浴を渇望
10月中旬になるとTさんは、再び腰部から下肢にかけての激痛と、血尿により、郡内の病院に入院しました。入院時の検査によると、ガンは肺や肝臓、そして全身の骨に転移していて、「年を越すのは難しい状態」と家族は告げられたそうです。
入院して2週間後にTさんのお見舞に訪れると、カラダはやせ細り、衰弱した感じです。しかし、血尿も治り、モルヒネの内服で痛みがコントロールされている様子で、笑顔を見せてくれました。言葉もしっかりとしていて、「カラダが垢だらけですよ。入浴車のホースはここまで届きませんかね。とにかくお風呂に入りたい・・・」と冗談をまじえて入浴への思いを語ります。
その後、11月下旬に退院が決まった旨の連絡を家族から受けましたが、退院後のTさんはやはり「とにかくお風呂を・・・」と望むのです。
入院していた病院の医師と相談すると、「転移で骨はボロボロの状態で、手を挙げただけでも骨折の可能性があります。体力的にも、入浴は困難でしょう。清拭や衣服の交換などで、身体の清潔に努めてほしいですね」と言います。やはりこれまでの方法では不可能となったのです。
事情を説明するため、Tさんを訪問すると、Tさんは、吐き気と食欲不振が続き、衰弱気味でした。医師との相談の結果を伝えましたが、「入浴を・・・楽しみにしていましたが・・・退院してから・・・カラダがだるくて・・・気分のいい時に・・・拭いてもらえれば・・・充分ですよ・・・」と、だるそうに、ひと言ひと言区切るように話します。
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「末期ガンを宣告され激痛と闘うTさんの訪問入浴に取り組んで」③~『入浴福祉新聞 第64号』より~
※発行当時の原稿をそのまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。
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