『入浴福祉新聞 第143号』(平成31(2019)年1月1日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
高橋ドクターのちょっと豆知識
きちんと水分補給をしていますか?
冬将軍の到来です。冷えた身体には「湯船」が何よりもご馳走といえますが、きちんと水分補給をしていますでしょうか?
●冬でも脱水?
夏場に比べ汗もかかない、喉が渇きにくいなどの理由で水分補給がおろそかになることから、日常的に脱水のリスクが生じます。
●冬場の脱水が生じる要因
○外部の要因
◇空気(外気)の乾燥
◇暖房による乾燥(現代の住宅は気密性が高く暖房効率は高くなるが、隙間風などによる通気やふすまや畳が減っているのも乾燥の一因)。
○本人の要因
◇体感温度が低いと喉の渇きを感じにくい
◇身体を冷やしたくない
◇トイレが近くなるので水分を控えてしまう
乾燥した環境では、皮膚や粘膜、呼気から自覚がないまま水分が失われる(不感蒸泄)のに加え、のどの渇きを感じにくいこと、本人自身が水分を控えているという循環は、リスクをさらに招いてしまうことになります。冬の脱水症状のサインとしては皮膚の乾燥(老年性のこともあります)、皮膚の乾燥による皮膚の掻痒、口腔内の粘りなどがあげられます。
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関連して以前にも紹介した「身体が冷えるとトイレが近くなる理由」もあわせてご説明します。
●冬は夏場と比べ汗をかかず余分な水分は尿となり排出される●寒くなると身体の熱を奪われないように血管が収縮するので、その結果、腎臓を通る血液も増加し、つくられる尿も増える
注意しなくてはならないのが、「水分を控えればおしっこも減らすことができる」ということです。冬場の「トイレが近くなるから水分を控える」という行為は感心できませんが、高齢者にはポピュラーな慣習といえます。
人間の身体に占める水分の割合は加齢とともに減っていきます。
特に「高齢者の入浴」は、身体全体の水分量の減少から脱水状態になりやすく、血液粘度の上昇を招きますので、安全に入浴をしていただくためにも、冬場であっても普段からの水分補給や、入浴前後の水分補給を習慣化していただきましょう。
※発行当時の原稿をそのまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。