『入浴福祉新聞 第140号』(平成29(2017)年7月1日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
肌の乾燥を防ごう!! 後
前号に続いて、今回は皮膚の状態、保湿剤、衣類、室内環境について考えてみたいと思います。
○高齢者の皮膚の状況を知って適切に洗う
汗腺や皮脂腺の機能が減退している高齢者は、特に冬場は毎日入浴する必要性は低いと言えます。
しかしながら頭部や鼻翼、陰部や太っている人の脇の下や鼠経など皮膚と皮膚が接しているところなどは、皮脂腺が活発な部位なので充分洗って乾燥させた方が良いと思います。反対に下肢などは乾燥傾向にありますので、軽く流すぐらいで様子を見たほうが良いところもあります。
「皮膚表面に存在する常在菌が酸性の膜を作って、外界の汚れやアレルゲンから肌を守る働きをしており、石鹸で洗うと90%の常在菌が失われるので肌のトラブルが発生する」という説もあるようですが、清潔にすることによって適度に菌数を減らし、感染症状を抑えることも健康維持には有用です。
○保湿剤の選択と使用方法
入浴後の5分以内は、湯中で皮膚の表面に浸透した水分が蒸発するため、毛穴が開いていて保湿剤が最も吸収されやすい状態です。皮膚と皮膚の接する部位を中心にタオルを押し当てながら、水分をふきとります。ローション、クリーム、軟膏の順に水分が多く、形状が液体から固体と固さが異なります。
水分が多いほうが伸びやすく浸透しやすいのですが、皮膚への有効成分が残りにくいと言えます。塗る際は手のひら全体を使い皮膚のしわにそって、均等に伸ばすように塗りましょう。この場合も匂いの強いものは避けましょう。
クリームタイプの場合、人差し指の先端から第二関節程度の長さの量で手のひら二つ分の面積に使えるのが目安です。塗った後に、皮膚の表面がテカる程度が適切です。軟膏もクリームタイプと同様の分量で考えますが、いったん手に受け、こするようにしながら温めましょう。軟膏の基材には油脂性が多いので、使用する前に伸びやすくしておいたほうが皮膚への負担が少なくなるためです。あらかじめ手を温めておいて軟膏を伸ばすのもより有効です。
手で軟膏を柔らかくした後、その手を目的の場所にべたべたと押し当て、皮膚を包むように塗ります。保湿剤を塗りながらマッサージを行うのも有効ですが、皮膚の弱い方の場合、こすると皮膚を傷めてしまう場合がありますので充分注意しましょう。
○室内環境
「冷え性だから」と電気毛布やこたつ、エアコンなどの暖房器具を長時間使用し、乾燥肌を招くことがよくあります。暖房器具で温まった際に、血の巡りが良くなって「かゆみ」を感じることがあるからです。部屋の乾燥を防ぐため、冬場は加湿器を使用し、湿度を40~60%程度の適切環境に保ちましょう。こまめな水分補給も重要です。
「あたたまるとかゆくなる」は、入浴時にも同様のことが起こります。血圧など循環器への影響もありますが、不必要な痒みの助長を避けるためにも高温入浴は避けましょう。室内温度も、20℃未満とし、一枚上着を羽織って過ごすくらいが適切温度と言えます。
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高齢になると季節に関係なく乾燥による痒みに悩まされる方が多くなります。一年を通じて保湿を心がけることが大切です。
※発行当時の原稿をそのまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。