『入浴福祉新聞 第143号』(平成31(2019)年1月1日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
気をつけたい!ヒートショックとは?
ヒートショックとは温度差によって急激な血圧の変動を引き起こすことです。
例えば、暖房の効いた暖かい部屋から寒い脱衣所へ移動し、衣服を脱いで冷えた浴室に入ると、血管は収縮し血圧が上昇します。また、熱い湯につかれば、温熱刺激によっても血圧は上昇します。
そこから湯船につかっていると、今度は体が温められることで、血管が拡張し血圧が急低下します。
血圧の急激な変動によって、意識を失って湯船で溺れたり、脳梗塞や心筋梗塞を発症したりする危険性があります。
消費者庁が人口動態統計を分析したところ、家庭の浴槽で溺死した人は2016年に5138人。内9割が65歳以上の高齢者と発表されています。
湯船入浴が介護予防
一方で入浴について画期的な話題もあります。
昨年11月に千葉大学などの研究グループが、高齢者約14000人に3年間の追跡調査を実施。浴槽につかって入浴する頻度とその後の新規介護認定との関係を調べました。その結果、週に7回以上入浴する高齢者では週に2回と比較して3割、要過誤認定のリスクが減少することがわかりました。
湯船につかる入浴の頻度が高いほど要介護認定のリスクが少ないことがわかり、高齢者健康維持に役に立っている可能性があることが、明らかになりました。
最新の入浴研究の第一人者であり、デベロが事務局を務める日本入浴福祉研究会の理事でもある早坂信哉医師(東京都市大学教授)の著書『最高の入浴法』(大和書房)では湯船入浴について徹底解説されており、ヒートショックの予防法についても詳しく説明されていますので、その一部をご紹介します。
ヒートショックの予防法
●入る前にコップ一杯の水分補給
●脱衣所を温めて、浴室は蒸気を絶たせておく
●酔っているときは入らない
●かけ湯をしてから浴槽に入る
●湯船から立つときは、立ちくらみ防止のため、水に手をかけるなど冷たいものに触り、ゆっくりと立ち上がる(寒冷刺激によって、血圧を適度に上げる効果がある)
その他にも「入る前に家族に声をかけておく」「浴槽では居眠り注意」といった日々の入浴における細やかな注意点が著書では記載されています。
日本の伝統的な生活習慣である浴槽での入浴が、高齢者の健康維持にも役立つという最新の情報です。
平成から新しい時代に向かおうとしている今、皆様へ安全で快適な入浴介護について、さらに研鑽を積んでいきたいと思います。
※発行当時の原稿をそのまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。