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2021 10.01
世界各地の温泉活用 ドイツ ~『入浴福祉新聞 第125号』より~

 

 『入浴福祉新聞 第125号』(平成25(2013)年7月1日発行)より

  過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。

  発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。

 世界各地の温泉の活用

 ドイツにおける健康法のご紹介

 

ドイツの温泉んちと言えばバーデンバーデンが有名です。しかしドイツでの健康療法は、必ずしも温泉療法が主流な訳ではありません。

ドイツの健康保養地は、クアオルトと言います。「クア〔Kur〕」とは、ドイツ語で「治療、療養、保養のための滞在」と記され「温泉気候保養地などに中長期滞在して、治療、療養、保養をする」ことを意味します。ドイツ温泉協会によると、健康保養地(クアオルト)は「地下物質(温泉、鉱泉、泥、ガス等)、海、気候などの自然条件が病気の治療・予防に適することが、科学的・経験的に実証されている場所」と定義されており、ドイツには現在約400弱程度の健康保養地があります。

ドイツの健康保養地(クアオルト)で実施されている健康療法は大別すると、気候療法、タラソテラピー療法、クナイブ療法、温泉療法の4つに分かれています。私たちがよく知っているドイツの温泉療法は、そのうちの1つのプログラムにすぎません。

気候療法とは日本ではあまり聞き慣れない言葉ですが、森林や山岳などの気候や地形要素を治療素材とする療法のことです。日本でも山形県・蔵王上山、和歌山県・熊野古道において、ドイツ式の気候療法を模範とした独自のプログラムが作られて実践されています。

タラソテラピー療法とは海洋性気候の下で、海水、海泥、海藻、その他海産物等の三要素(運動、栄養、休養)をバランスよく活用しながら身体の機能を高める総合的な自然療法のことです。海岸での潮風を浴びながらの日光浴や大気浴は新陳代謝を高め、肺活量や血液循環を促進します。特に砂浜を裸足で歩くことは、足の裏(自律神経)を刺激することで、運動効果や身体の温度調節機能を高める効果があるとされます。

クナイプ療法も日本ではあまり知られていませんが、19世紀半ばに、S.クナイプ神父が創設した伝統的な水治療法のことを言います。当時のローマ法王の不眠症や西洋医学で治らなかった諸病を改善させたことから各地に広まりました。現在でもドイツでは「1マルクの投資で3マルクの節約」と言われ、町ぐるみでクナイプ療法を実践できる保養地を運営しています。日本では財団法人 大阪クナイプ療法協会が総合窓口となり、日本での普及活動を行っています。

クナイプ療法の聖地であるバイエルン州の健康保養地、バード・ヴォーリスホーヘンでは、広場や公園を始めホテルや病院に至るまで、街のあちこちに「冷水歩行浴」や「冷水腕浴」のできる設備があります。療養の人々はもちろん、健康保養地に暮らす全ての人々が楽しみながらクナイプ療法を日々実践できるような「しかけづくり」がされています。

最後にドイツの温泉療法は「バルネオセラピー」と呼ばれ、主として温泉(鉱泉)や泥を作った療法のことを言います。特に泥(ぺロイド)療法はイタリアの「ファンゴ」のように「温泉泥」に限定しておらず、植物等を腐敗させて作った泥「モール」も含まれています。

温泉療法は、温泉病院で医師の管理の下で行う慢性病の治療や、リハビリテーションなどの「狭義の医療的温泉療法」と、温泉を健康づくり、病気の予防・保養に活用する「温泉ウェルネス」に分けられています。こうした温泉療法は原則として現代医学的な根拠に基づく医療であることが求められています。したがって温泉浴と同時に各種の水治療、マッサージ、温熱療法などの理学療法、温泉プールでの水中運動や屋内外でのレクレーション運動、食事療法、心理的リラクゼーションなどが行われるのが一般的です。

以上、ドイツでの健康療法を紹介してきましたが、ヨーロッパ諸国の健康療法にはこうした様々な制度やきまりがあって、はじめて公的保険が適用されています。その一方で、我々日本人には健康療法という言葉自体に馴染みがありません。日本人が大好きな「温泉」についても、ただ湯船に浸かって自然を眺めながらゆっくりとするという日本の風習は、ご紹介したヨーロッパの事情と全く異なっていることがわかっていただけたでしょうか。

 

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