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2021 12.24
世界各地の温泉の活用 日本~『入浴福祉新聞 第127号』より~

 『入浴福祉新聞 第127』(平成26(2014)年1月1日発行)より

  過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。

  発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。

 世界各地の温泉の活用

 日本でのビオファンゴ(温泉地)プロジェクトのご紹介

 

日本で最初に地域独自のビオファンゴ(温泉泥)を開発するプロジェクトを実現したのは、富山県砺波市の庄川温泉郷にある「鳥越の宿・三楽園」という温泉旅館です。庄川温泉郷は数軒の旅館から成る小さな温泉地で、竹下首相の「ふるさと創生一億円事業」の資金で新たに掘削した温泉です。

知名度の低い庄川温泉郷にとって起死回生の試みが「庄川ビオファンゴ」の導入でした。当初は庄川温泉郷旧会社の事業として取り組む予定でしたが各所の足並みがそろわず、最終的に三楽園が単独で自社の温泉(鳥越の湯)を利用して挑戦することになりました。

三楽園は100坪のエステサロンを持つ女性客をターゲットとした温泉旅館です。エステ部門は旅館の店子ではなく、エステティシャンも全て自社の社員。地方の温泉旅館でこれだけ本格的なエステ体制を整える施設は、全国でも稀ではないかと感じています。

「女性客をターゲットとする」と謳っていても、当初の三楽園は団体宴会客を積極的に取り込み、酔客とカラオケで賑わう館内でありました。客単価は安くても、団体客の需要は魅力的です。しかしビオファンゴ導入を機にカラオケ設備を全て廃止したことで、団体客は激減。経営的な窮地に追い込まれました。

そこで三楽園は富山県内の企業や病院を新規に営業し、女性社員の福利厚生として「日帰りファンゴ&エステプラン」を提案しました。現在では女性の医療関係者や企業社員の奥様等が団体で日帰りプランに押し寄せるようになりました。温泉入浴してランチを食べファンゴ&エステを体験し、一人当たり約3万円程度を頂けるようになったそうです。食事も栄養士が関与するヘルシーメニューを加えることで、宿泊部門でも確実に客単価が上がっていきました。

三楽園の取り組みでもう一つ大胆だったのは、庄川ビオファンゴの導入で、女性用の浴槽を泥熟成用のプラントとして転用したことです。三楽園には温泉用として男女各3つずつの浴槽がありました。その他に温水用の男女別浴室がありましたが、そのうちの女性用浴槽をビオファンゴプラントとして、更に洗い場を施術スペースとして転用されました。さすがにこの試みには、内部からの反対が多かったそうです。しかしお客様の数は順調に増えていきました。施術スペースから温泉泥熟成プラントを覗けることが、お客様の驚きと感動を高める仕掛けにもつながったようです。おかげさまで三楽園の庄川ビオファンゴは、年間で1000人近くのお客様がリクエストされる人気の定番メニューとなっています。

温泉が日本で保険適用にならないのは、温泉やスパなどの効果効能とエビデンス(科学的根拠)の検証が難しいからです。勿論このことは、イタリアをはじめとする、欧州各国でも同じ状況です。しかし彼らは「科学的根拠」だけに固執していません。人間の治癒に対する「経験力」も医療に応用しようという発想や柔軟性に富み、実に許容範囲が広いのです。

ビオファンゴプロジェクトにおいては、あえてこの「科学的根拠」の実証に挑戦してみました。経産省からいただいた補助金を利用して、2年にわたりビオファンゴの温熱効果について実験をしました。

初年度には「ビオファンゴ」「温泉入浴」「さら湯入浴」を比較した実験を行いました。入浴(施術)後の皮膚表面温(サーモグラフィー)の結果では「ビオファンゴ」の温熱保持力が最も高いことが実証されました。ビオファンゴは体全体に塗布するのではなく、首・肩・背面・腰・臀部・肘・膝・足首等の関節を中心とした部位に置いていきます。「温泉入浴」と「さら湯入浴」が全身浴ならば、「ビオファンゴ」は部分浴に相当すると思われます。「ビオファンゴ」は更に前二者と比較して、心拍や血圧血流の急激な上昇がみられず、体に優しい入浴であることもわかりました。すなわち、高齢者や虚弱体質の方々にとって「ビオファンゴ」は、体に負担を掛けずに効率良く温熱効果を得られる「部分浴」法ということになります。

2年目の研究では、温泉で作った「真ファンゴ」と温水で作った「偽ファンゴ」を2日間にわたって合計4回施術した後の、深部体温(舌下温)の比較をしました。結論として「真ファンゴ」は「偽ファンゴ」よりも高い温熱効果が実証され、温泉水ビオファンゴを作る意義が改めて明らかとなりました。また「真ファンゴ」被験者比べて、実験終了7日後も平均で0.35℃程度高く保持されていることがわかりました。

ご当地の温泉と泥を使って開発する、ビオファンゴプロジェクトは、まだまだスタートしたばかりです。今後も全国の温泉地で継続して普及啓蒙していくことで、新しい温泉資活用、健康づくり、更には入浴方法として認知されていくことを願っています。

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