日常から介護まで総合入浴情報サイト

お〜風〜呂.info

日常から介護まで
総合入浴情報サイト

BATHINGお風呂
2021 11.12
世界各地の温泉の活用 アメリカ~『入浴福祉新聞 第126号』より~

 『入浴福祉新聞 第126号』(平成25(2013)年10月1日発行)より

  過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。

  発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。

 世界各地の温泉の活用

 アメリカ・カリフォルニア州におけるエサレン研究所のご紹介

 

エサレン研究所とは、1962年にカリフォルニア州ビックサーに設立された、心理学・ボディワークなどを行う、宿泊研修施設です。エサレン(Esalen)の名前は、数百年前からその場所に住んでいたと言われるネイティブ・アメリカン「エサレン族」に由来しています。

ビックサーはサンフランシスコから約4時間ほど海沿いに南下した所にあり、近くはモントレーカーメル、サリナスといった風光明媚な観光名所として知られる街があります。ビックサーは、太平洋を臨む断崖絶壁の場所で、温泉の湧き出る自然の豊かな土地です。断崖に打ち寄せる波音が常に響きわたり、いにしえより多くの目覚めた先駆者達がこぞって移り住んできた所でした。以来、心と体、スピリットを総合的に探究する拠点として、エサレン研究所は全米で広く信頼を集め、多くの哲学者や文学者、心理療法家、身体技法研究家、アーティストが様々な実験的な試みを展開してきました。

エサレン研究所設立以来、太平洋岸沿いに位置する美しいビックサーの地に足を運び、ワークショップのクラスで、食堂で、温泉でセッションルームで共に語らい、交流を重ねてきました。そこで繰り広げられるエサレンボディワークとは、このエサレン研究所の土地と歴史に育まれながら、様々なメソッドを学んだボディワーカー達が、注意深く実践を重ねる中で全身のオイルトリートメントとしてまとめあげてきたものです。

エサレン研究所内には、ロッジ風の建物やコテージ、円形のヤードなどが点在し、ワーク・スタディなどの滞在型も含め、年間数百のワークショップが開催されています。その中には2~3日の短いセッションから数か月に渡る長期のメニューもあります。ワークショップの種類もヨガ、ダンス、マッサージ、ゲシュタルト心理学等多岐にわたっていてボディワーカー、精神科医、臨床心理士、看護師、教師、ソーシャルワーカー等の専門家に向けたクラスが多く提供されています。

エサレンマッサージは一般的なオイルマッサージとして広く知られている、スウェーデンマッサージをベースにしています。トリートメントでは、ホホバ油等の植物油を使って全身のマッサージを行います。心と体の全体から人間を観ていこうという視点より、全身のロングストローク、立体的で体の深部へ伝わるようなアプローチ、手足へのムーブメント、ロッキングなどのテクニックが加わってエサレンマッサージを更に固有なものにしています。

エサレン研究所ではこうしたマッサージだけではなく、徹底したオーガニックな食事にも特徴があります。敷地の中では多くの野菜が自家栽培されていますが、とにかく全ての食材が新鮮で元気、そして何よりも安全で手が込んでいるのです。調理している人の温かい心が感じられる、まるでお母さんの手料理のような食事です。全てが安全で愛情がこもっているという点において、これ以上の「最高の贅沢」はないのかもしれません。エサレンで提供されるオーガニックで魅力的な食事の数々は、レシピ本として出版され一般にも広く紹介されています。

エサレン研究所の敷地中央部には、誰もがいつでも自由に出入りできる食堂があります。そこで1日3回、ブッフェスタイルで食事が提供されています。この食堂で隣に座る相手は、人種も言葉も年代も宗教も、全てが異なる人々です。通常だったら絶対に出会わない人々かもしれません。ここでは国籍や身分、貧富の差を超えて、誰もが平等に生活できるのです。そうした平等の感覚がなんとも新鮮で心地良く感じるのは、一般社会が不平等と偏見に満ち満ちているからかもしれません。エサレン研究所での滞在中は、その世界から解放されます。それが予想以上にストレス発散になるということもここでの新しい発見となります。

エサレン研究所のイメージを、一言で表現するならば「心の避難所」もしくは「エネルギーチャージの場所」でしょうか。一般社会の中で疲れ切った人、新たな啓発を待ち望む人が、各々の目的を持って集い、多国籍の同志たちと交流する。そこで得られたエネルギーをまた一般社かに持ち帰り、各々の持ち場で発揮するための「再生場所」という感じです。

エサレン研究所の中で、もう一つの欠かせない要素は温泉です。ここでは男女混浴が基本ですが、決していやらしいイメージはありません。お互いに敬意を持って、マナーを守り入浴しています。外国人はプールのようにお湯を溜めて入浴する傾向がありますので、日本人的な感覚ではお湯を「かけ流し」したくなります(勿論、源泉かけ流し可能です)。

エサレンの泉質は硫黄泉。入浴分析表はないので詳細は分かりませんが、こんな海沿い(通常は塩泉が主流)で本格的な硫黄泉を楽しめるとは、とても貴重な体験です。目の前の海は太平洋、その遥か彼方には日本が横たわっています。異国で硫黄泉の温泉に入れるという意外性と望郷の念いかられ何とも言えない気持ちにさせられてしまう。エサレン研究所のあるビックサーは、日本人にとってそのような郷愁を抱かせる土地でもありました。

いいね!
ツイート

    お名前
    メールアドレス