『入浴福祉新聞 第131号』(平成27(2015)年1月1日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
高橋ドクターのちょっと豆知識 医療法人千甫会高橋外科医院副院長 高橋 亨
■鼻の機能と冬場の入浴■
寒さが厳しくなるとともにインフルエンザウイルスなどの流行も気になります。そんな季節には、やっぱりお風呂ではないでしょうか。身体を清潔に保ち、血行を促進し、代謝や免疫力を高めるには最高の習慣だからです。さらに、空気が乾燥しやすい冬場には、鼻の役割を助けるのにも効果的です。
鼻は呼吸をするときの、空気の入り口です。実はこの鼻ですが、空気の出入り口だけでなく、大切な役割を果たしていますので、今回はにおいや鼻のメカニズムについてお話させていただきます。
においを感じるメカニズムは、鼻腔の奥にある嗅粘膜で感じ取ります。嗅粘膜は、左右それぞれ1cmの面積を占めていて、匂いの分子は、鼻孔から吸気に伴って鼻腔に入るだけでなく、食べ物を口に入れたときなどに吸気に伴っても入ってきます。におい分子が嗅粘膜に到達する自由表現(外層)が嗅上皮であるが、嗅細胞以外に支持細胞、基底細胞、上皮表面に粘液を分泌するボウマン腺細胞で構成されています。
におい受容に働く嗅細胞は、左右合わせて600万個あります。嗅細胞は、においを感じ取ると電気信号を発生させます。この電気信号が臭神経を経て脳へと伝達し、におい感覚がおきます。
鼻の役割として、大事なことを説明します。
1つは、フィルターとしての機能。もう1つは、加湿器・エアコンとしての機能です。
空気中には埃やごみ・細菌・カビの胞子などがたくさん含まれています。そんな汚れた空気をそのまま吸い込むと、肺炎や気管支炎の原因になります。そこで、肺に入る空気のゴミなどを、濾過するところが鼻腔です。
まずは、鼻の入り口(鼻前庭)に生えている鼻毛が比較的大きなゴミを取除きます。鼻毛が黒々と見えているのは格好悪いかもしれませんが、ゴミを取り除くという大切な役目があるのです。
次に控えているのが、鼻腔粘膜と粘膜表面の繊毛です。鼻毛がとりきれなかった、より小さなゴミや細菌などを取り除きます。
加湿器・エアコンとしての鼻腔の働きについてですが、肺での呼吸に最適な空気の湿度は37度で、湿度は95%と言われています。ですから、冬の寒い時期に冷たくて乾燥した空気がそのまま肺に入っていたら、肺や気管支の急激な収縮を起こして喘息のような発作を起こしかねません。ここでも鼻腔の構造が役に立ちます。空気を温めて、湿気を与えることで肺のダメージを軽減してくれます。逆に砂漠などの灼熱地帯では、熱い乾燥した空気を鼻腔は冷却・加湿しています。
したがって、湯気の出るようなお風呂に入ることは、肺へ湿気のある温かい空気を最初から与えることで、より肺に湿気を与えて、乾燥状態を好むインフルエンザウイルスなどを予防する効果がありますので、ここでも冬場のお風呂が健康に一役買っているというわけです。
ただし鼻出血の方が入浴をすると、鼻粘膜の血管も拡張して、出血を促すことになりますので、長時間の入浴は避けるようお願い致します。