『入浴福祉新聞 第128号』(平成26(2014)年4月1日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
高橋ドクターのちょっと豆知識 医療法人千甫会高橋外科医院副院長 高橋 亨
■炭酸ガス入浴とトレーニング■
炭酸ガス入浴は、炭酸ガスの発泡によって湯浴効果がさらに高まり、血行が促進されて筋肉疲労の回復のみならず精神的な疲労の回復にも、役立つことが知られています。
私はあちこちのマラソン大会に出ていますが、よく仲間から高濃度の炭酸ガス入浴が良いと聞きます。冬の夜間の練習では全身が冷えます。特に手足の冷えは、ひどくなると痛みしびれになることもあります。炭酸ガス入浴剤を2つ入れると、泡の数が倍になることが長時間の入浴ができないときには有効だそうです。
長時間ゆっくり入れるときには1つ入れた後で、15分くらいしたらもう1つ入れる方法があります。2個目を入れたらゆっくりと腓腹筋と大腿四頭筋・ハムストリング筋群のマッサージをするとより効果的だそうです。
さらに、マラソン大会の前日にこれをするとタイムが良くなるそうで、今度の大会では是非試してみようかと思います。ちなみに一般的な炭酸ガス入浴剤の炭酸濃度は1000ppm以上となっています。訪問入浴介護の炭酸泉入浴は入浴の温熱効果が飛躍的に向上することをはじめ、褥瘡の症状改善に至るまで効果があることに納得ができます。
マラソン大会後の入浴で定説なのは、ゆっくりとお風呂に入ると次の日が違うことです。大会などの後では入浴で体をほぐしますが、練習となると簡単にシャワーで済ましてしまう方も多いのではないでしょうか。実は練習の後でも時間をかけて入浴すると筋肉の疲労回復が早まります。ランニングによって破壊された筋肉は24時間では回復しきれていないのです。ランナーにとって最も大切なのは、筋肉疲労をいかに早く回復させるかです。
体の状態を常にベストにしておくこと、毎日の練習で疲労を蓄積させないこと、これが楽しいトレーニングと結果に繋がります。ここでいう結果とはタイムだけではありません。気持ちよく苦しくない走りができたか否かです。
湯温は何度くらいがいいのか、入浴時間はどのくらいがいいのか、どのタイミングで炭酸ガス入浴剤を入れるのがいいのかは練習量などとの兼ね合いで変わってくると思います。そして大会前の日の湯音と大会後の疲労回復のための湯温は若干違うようです。
湯温はレース前が40~42度。レース後は39度~40度と若干低め。両方とも、できたら1~2度低い温度から上げていって、再び1~2度少し低くすると効果的です。これはレース後では、筋肉が疲労炎症を起こしているので、筋肉自体も発熱している状態です。そこにさらに熱を加えると、緩むべき血管やシスターンが逆に収縮する可能性があると思われるからです。入浴時間は20分以上です。
最初に炭酸ガス入浴剤を2個いれてしまい、そのまま20分くらい入浴し途中でマッサージを加える方法と、入浴剤を1個入れて10分後にマッサージを行いその直後にもう1個追加して30分の入浴をする方法があるようです。
入浴中の公判ではまず腰から下の筋肉のマッサージをします。時間があったら大腿前面の筋肉、さらに時間があったら、大腿後ろ面の筋肉マッサージが効果的。順番は足1、2、3趾のストレッチ2、3、4、5趾同時のストレッチです。次に土踏まずのマッサージ。そしてふくらはぎ、その前側の順。これを5分くらいでやります。さらに時間があるなら大腿もやりましょう。
訪問入浴介護でも近年は、炭酸ガス入浴が注目されているようですが、どんな炭酸ガス入浴をするのかにも同様の注意点があります。訪問入浴サービス提供中に炭酸ガス入浴剤を入れた際などにご利用者の身体に泡がついているのをご覧になったことはありませんか?
炭酸ガス入浴ではこのようにからだに泡がつきますが、この泡は決して払わないでください。せっかくの炭酸ガスが無駄になってしまいます。使用上の注意をよく読み、より効果的な炭酸ガス入浴を心がけてください。