『入浴福祉新聞 第81号』(平成14(2002)年9月1日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
訪問入浴のコトをケアマネさんにもっと伝えよう
デベロ老人福祉研究所介護支援専門員 生駒みよ子
「介護支援専門員」という職名は堅苦しい感じがするためか、「ケアマネジャー」の方が利用者や家族にも通りが良くなってきた昨今です。
早朝から高齢者宅を駆け回り、ヤレヤレと思いながら事務所に帰ると、机の上にはドッサリと書類が待ち構えている、といった日常にも慣れてきました。
介護保険が始まって、当初は私もどうなることやら不安でしたが、サービス利用者の満足度などが伝えられると、やはりホッとした気分になるものです。なかでも、私がケアプランを担当している利用者からは、訪問入浴サービスへの苦情はほとんどない点は幸いです。
要介護3の男性Oさんは、訪問入浴サービスを受け始める時、「他人にやってもらうのは嫌だ…歩けなくてもオムツは嫌だ…」と、嫌だ嫌だを連発しながら、恥ずかしそうに訪問入浴を利用して1年になりました。
過日、そんなOさん宅に入浴スタッフが訪ねたところ、ナント「歩けない」と言っていたOさんが部屋を歩いていたというのです。
スタッフは驚きながら、「Oさん良かったわネ」と喜びを伝えると、Oさんも嬉しそうにいろいろな話をするようになったそうです。しかも、それまでは入浴が終わるまで隣の部屋で見ていた奥様が手伝うようになり、帰る際には家族全員でスタッフと入浴車を見送るようになったとのこと。
介護の負担が軽くなると、たちまち家族は明るくなるものです。その家族介護で負担の想いのが入浴で、無理をして自宅浴室での介護をするより、訪問入浴を積極的に優先的に利用することを、私は家族に勧めています。
先日、「2回が居室の利用者でも、入浴サービスは受けられるでしょうか?」との相談を、他の事業所のケアマネさんから受けました。そのケアマネさんは、通所の入浴サービスを考えていたそうで、2階から利用者を連れ出す方法を、随分と思案していたようです。
私は、浴槽を運び込むスペースがあれば充分に対応できる旨を伝えたりして、2階での入浴に取り組んでいただきました。現場に立ち会ったそのケアマネさんは、訪問入浴の一部始終と初めて接することもでき、随分と勉強にもなったようです。
ケアマネさんは全国に何万人といるわけですが、訪問入浴のことをほとんど知らない方も珍しくなく、残念に思えます。訪問入浴に精通されている専門家は、もっとケアマネさんにその方法や利点を伝えてゆきたいものだ、と痛感しました。
訪問入浴は、身体に負担をかけない…安全である…といった身体的や物理的なメリットがあるのはもちろんですが、住み慣れた家の中の見慣れた天井の下で、人生の軌跡を回想しながら、ゆったりと湯の感触を味わえる最高の〔至福サービス〕だと私は思っています。
※発行当時の原稿をそのまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。
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