『入浴福祉新聞 第75号』(平成13(2001)年4月1日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
介護保険まる1年・・・改善に向け従事者はもっと意見を出そう
「バブル経済の崩壊以降、失策が続いた国策のなかで、ただ1つ評価できるのは介護保険だ」と語る識者がいるほど、介護保険はまさに[福祉のビッグバン]でした。
この制度のおかげで、メディアもさまざまな角度から[福祉報道]をつづけることにもなり、また、関係者の東奔西走や使命感に燃えた奮闘のおかえで、致命的な大混乱にはいたらず、新制度のスタート期にしては順調だった、ともいえるのかも知れません。
むろん問題点が、かなりあることも浮き彫りにされました。
第1は、利用率の意外な低さではないでしょうか。[この人には、これぐらいの介護サービスが必要]、と考えられた結果の[在宅サービスの利用限度額]に対して、[実際の利用額]は平均43%で、要支援や要介護と認定されたのにサービスを利用しない人もかなりいることも判明しました。
具体的な利用方法が難解で煩わしい、といったことに加え、やはり1割の自己負担は低所得者にとって大きい点が、利用率の意外な低さの要因かもしれません。
利用方法・・・保険料・・・自己負担・・・など基本的なところを見直す必要があるようです。
次に大きな課題として表面化しつつあるのが、ケアマネジャーの役割でしょう。
[介護保険制度のカナメ]と美化されて、資格取得試験に殺到する現象まで起きたのですが、実際この新職種に就いたものの、市町村への書類の届け出・・・利用者に渡すサービス利用表や計算書・・・利用状況をチェックした給付管理表・・・などなど、山積みの書類と格闘するだけの毎日となり、とても、介護のプロデューサーやディレクターとはいえないのが現状です。
やはり、提出書や請求書を作成する専門家[介護保険事務員制度]を導入し、ケアマネジャーが一人ひとりの利用者と頻繁に接触でき、心身の状態を常に把握しながら、適切な介護を提供する[総監督]のような本来の業務に専念できるようにすべきです。
そのためには、介護の現場に精通している人のみに受験資格を与え、将来的には独立した事業所にしてゆくことが理想だと思います。
3番目は、とりわけ訪問入浴サービスについての介護報酬の見直しでしょう。
訪問入浴サービスの利用者も心身の状態はさまざまです。そして、デイサービスが普及した近年は、医療的処置を必要とする在宅患者さんの訪問入浴サービスが急増の一途をたどっています。
しかも、介護保険制度によって、主治医からの医療情報が得にくくなり、現場は不安を抱えながら対応するようになりました。そんなこともあって、重度の患者さんへの訪問入浴は、看護婦2名で対応すべきでは・・・との声すらあがってきました。
利用者の状態にかなりの格差がある訪問入浴サービスが一律12500円ではやはり合理的ではありません。「簡単な業務で済む利用者もいるはずだし、平均すれば12500円でいいのでは…」との発想はドンブリ勘定そのもので、いただけません。要介護度別の報酬金額を早い時期に関係者は提出してゆく必要を痛感します。
いつの時代でも、新しい制度は不都合な点が必ず表面化します。それをぜせいしてゆくためにも、実際の業務に従事している皆さまが、問題点と改善案を積極的に提示してゆかなければなりません。本紙にもぜひご意見をお寄せください。
※発行当時の原稿をそのまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。
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