『入浴福祉新聞 第90号』(平成16(2004)年11月15日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
なぜ褥瘡は入浴で治癒が加速されるのか?
4℃の加温で約3倍の酸素が供給され肉芽形成細胞に有利な環境が整うため
〔入浴をすると褥瘡の治りが驚くほど早い〕といった話は、訪問入浴介護従事者の間では常識。最近は、訪問看護ステーションや医療機関の看護師さんも〔褥瘡や創傷の治癒と入浴〕の関連に注目をされる方が多くなってきたようです。
看護専門の書籍でも、積極的に入浴を勧める記述が増えてきたのは喜ばしいことです。
例えば、『創傷・褥瘡ケアと栄養管理のポイント』(フットワーク出版社)という本にも、「褥瘡の治癒と入浴」の項目があり、創傷治癒の障害となる異物や細菌を除去するために、創傷面と創傷周囲の皮膚の洗浄は基本である…としています。
では何故、入浴が褥瘡や創傷の治癒を早めるのか?いろいろな視点で入浴の利点が解説されているようですが、この本では、〔加温〕による〔酸素供給量の増加〕が早期治癒の要因としています。
創傷面温度の細胞増殖速度を、「21~27℃」と「30~35℃」とで比較すると、24時間後に後者は前者の2倍、72時間後になると約2.5倍になる、との研究があるそうです。
その理由は、局所を加温することで、血流が好転し酸素供給量も増加することで、肉芽を形成する細胞に有利な環境になるためと考えられるからです。4℃の加温で局所には約3倍もの酸素が供給されるとの報告もあり、創傷や褥瘡の治癒が加速されるわけです。
〔褥瘡の治癒と入浴〕についての研究は、医学的に解明してゆきたい大きなテーマです。入浴介護に従事されている方のご奮闘に期待しています。
※発行当時の原稿をそのまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。