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2023 03.10
「介護の言葉」で最も難しいのが入浴のとき~『入浴福祉新聞 第94号』より~
 従事者向け

『入浴福祉新聞 第94号』(平成17(2005)年12月1日発行)より

過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。

発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。

 

「田中さんお風呂に入りましょうネ」「鈴木さんお湯加減はいかがですか?」

「介護の言葉」で最も難しいのが入浴のとき

人間が最もデリケートになりますから

 

2005年度の介護保険改正のなかで厚生労働省は、近い将来、ヘルパーを介護福祉士に一本化する方針を固めました。

これまでのヘルパー養成の不十分さが、利用者や家族からの苦情やヒヤリ・ハット、そして事故を引き起こす誘引になっている、と判断されたためです。

確かに、施設でも在宅でも、職員やヘルパーの不適切な言動が少なからずあり、利用者の人権尊重の観点からも、質の向上を期待する声が多いことは否めません。

とりわけ、利用者が無防備になる入浴介護では、ふだん以上に言葉づかいに注意が必要です。

世の中には、発言を撤回すれば済んでしまう職業があるものの、デリケートで精神的な存在でもある要介護者は、自分に発せられた言葉ひとつで、深く傷つけられます。

場合によっては、「あの職員やヘルパーの世話にはなりたくない」と思うこともあるでしょう。そうなると、介護者と利用者との関係が取り返しのつかないほどギクシャクしたものになり、それが介護トラブルにもつながってしまいます。

そこで今回、入浴介護での言葉を再考してみました。

「恥ずかしくなんかないですよ」と、つい言ってしまいがちです。しかし、他人の前で裸になることは誰もが恥ずかしいはずです。

本人が恥ずかしがっているのに、介護者が[感情のもちよう]を一方的に押しつけることほど失礼なことはありません。

羞恥心は人間特有の感性ですので、高齢者の尊厳を守る意味でも羞恥心を否定する言葉は禁句にしたいものです。

羞恥心を大切にする介護を心がけることで、利用者と介護者との信頼関係が築かれていきます。

「男性のヘルパーさんでもすぐ慣れますヨ」も考えものです。

利用者のなかには、異性介護を受け入れる方もいるでしょうが、とりわけ入浴介護では本人の意向を尊重すべきでしょう。

施設でも在宅でも利用者は入浴を待ちわびています。

早く入りたい、という気持ちが行動に出てしまいます。それを制止するつもりで、「まだ準備できていないよ」「おとなしく待ってなさい」といった叱責調や命令調の言葉を使ってしまいがちですが、「すぐ入れますから、もう少し待っててくださいね」といった丁寧語を使いたいものです。

利用者が裸になる入浴介護は、体重の増減…皮膚の状態…湿疹や褥瘡の有無や程度…創傷の有無…手腕脚足の状態…などを確認できる大きな利点があります。

とはいえ、「ずいぶん肥っているネ」「痩せちゃったな」「体重が増えたんじゃない」「この脚、変な恰好で曲がっているネ」「褥瘡がひどいですよ」とズケズケと言っては利用者も傷つきます。

裸になったとき、身体の特徴や欠陥などをあれこれ声に出して指摘するのは侮辱。要介護者でなくても不愉快ですからご注意を。ましてや、「臭いねえ」などと言うのは絶対に避けなければいけません。

脱衣をして浴槽に移っていただく場合、「重いねえ」とか「やりずらいなあ」と口走ったり、果ては「どっこらしょ」「どっこいしょ」「よっこらしょ」などの掛け声を出してしまいがちです。要介護者は厄介な荷物扱いをされていると感じるはずです。

「さあお風呂に入りますヨ!」が適切な掛け声ではないでしょうか。

浴槽に移っても、「どれ、洗ってやるか」などはもってのほか。「さあ、洗いましょうネ」と優しく声をかけるのが常識でしょう。

「お尻にウンチが付いているので、よく洗いましょう」も不適切。羞恥心を直撃する言葉に、人間は耐えられません。「ちょっと汚れているからよく洗いましょうネ」と遠回しな表現が適切です。

入浴中は、「痒いところはないですか?」「ご気分はいかがですか」「お風呂にいっぱい入って、褥瘡を早く治しましょうネ」など臨機応変な会話ができるように心がけたいものです。

「熱くないでしょ」「ぬるくないでしょう」も禁句。快適に感じる湯温には個人差があり、一方的に決めつけられては、利用者も迷惑です。入浴介護では37℃から39℃までの微温浴が原則ですが、39℃でも、長いこと入浴していない利用者の中には、熱く感じる利用者もいないわけではありません。

それなのに、「39℃ですから熱くないはずですヨ…我慢…我慢」「これくらいがちょうどいいお湯」と言うべきではありません。「我慢」は介護の禁句です。

お湯がぬる過ぎる、と訴える利用者にも「我慢…我慢」では困ります。「ぬる湯の方がカラダにいいんですよ」と優しく伝えたいものです。

湯温をどう感じているか?を訊ねる名文句があります。そう、「お湯加減はいかがですか?」です。

「凄い垢ですよ」「面白いように取れます」も禁句。汚れていることを、直接的な表現にすべきではありません。

「久しぶりの入浴ですね。気分はいかがですか?」といった声かけがいいでしょう。

入浴を終了させる際、「もう出ますヨ」「早く出ないとダメです」もいただけません。「ご気分はいかがですか…もうそろそろ出ましょうネ」「さっぱりしたでしょう…顔色もいいですよ」と声をかけ、「きれいに拭いてから、新しい寝巻に着替えましょうね」と誘導したいものです。

要は、禁止…命令…指摘…咎め…叱責…詰問…嫌味…愚痴…強要…強制…決めつけ…拒絶…無視…罰則…急かせ…などの言葉は利用者のプライドが傷つけられるので避けることです。

 

 

 

※発行当時の原稿をそのまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。

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