『入浴福祉新聞 第85号』(平成15(2003)年11月15日号)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
有料老人ホームか?共生型の住居か?
[脱特養時代]に問われる高齢者の住まい
介護保険制度はもともと[在宅介護中心]を理念にしていますが、皮肉なことに、制度が施行されて以来、家族からは要介護者を特養に入所させたい、という希望が増加してしまいました。とはいえ財源難もあり、厚生労働省ではすでに[従来型の特養]は増設しない方針を決め、[個室型ホーム]に切り換えましたが、ではこれがどこまで増えるのか、疑問視する声も少なくありません。
そうした中で目立ち始めたのが[介護型有料老人ホーム]です。
入居一時金が数百万円程度のホームもあり、[親が厄介]と考えている家族は、[経済的な朗報]とも考えているようです。
しかし、有料老人ホームは、トラブルの連続と言っても過言ではありませんでした。数千万円も支払って入居したものの、要介護の身になったら退去させられたり、雑居部屋に移されたり、などなどがあり、公正取引委員会から<厄介視>されてきたほどです。
介護保険制度が導入されて、有料老人ホームにも介護報酬が支払われることになりましたが、入居時に徴収した[介護一時金の残金]を清算しなかったり、手厚い介護をうたいながら不明朗な[上乗せ介護費]を徴収したり、などなどが、現在でも後を絶ちません。
新手の[介護型有料老人ホーム]も、入居者の生活の質はしっかり守れるのか?はなはだ心もとない、と警告する識者もいます。
そんなこともあり、公正取引委員会では、入居者募集の際の告知内容と現実の落差に厳しく目を光らせる方針を固めたそうですが、不動産業の発想で[高齢者を食い物にする]商売は厳しく排除してほしいものです。
その一方で、注目されてきたのが、[痴呆性高齢者のグループホーム]や、現在では自立していても気の合う仲間で助け合いながら生活してゆこう、という[共生型ミニ集合住宅]です。
いずれも入居者の満足度は高く、設立や運営にNPOがかなり活躍している点でも共通しています。
[高齢者の住まい]をどうするのか?「高齢者福祉が日本の課題」とされ始めた当初からの最大のテーマでしたが、ここへきてようやく一つの大きな流れが見えてきた感じがします。
※発行当時の原稿をそのまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。