『入浴福祉新聞 第45号』(平成5(1993)年10月1日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
左手で書道に挑戦!手紙も書けるまで上達しました
入浴介護を受けている茨城県谷和原村の稲葉喜代治さん
茨城県谷和原村にお住いの稲葉喜代治さん(大正4年生まれ)は、桶づくりの名職人として生きてきましたが、昭和54年に脳出血で右半身麻痺の身体となり、以来15年間、家庭のお風呂には入れず、1週間に1回ほど、行水で我慢する生活となりました。でも、風の日や雨の日は行水もできません。
昨年4月に体調を悪くして、1ヵ月の入院をしましたが、特殊浴槽での入浴は、わずか1回だけだったそうです。自宅にもどってからもまた“入浴無し”の生活となりそうでしたが、さいわい役場からデベロ介護センターに要請があり、移動入浴車が派遣されることになりました。
「座敷でおフロに入れるとは、夢にも思いませんでしたよ。この喜びを大勢の人に知らせたいです」と語る稲葉さんです。
その稲葉さんが、片麻痺に負けず、趣味にしてきたのが書道です。
ある日、テレビで小児麻痺の障害者が口や足で、「書」をしたためている姿を見て、涙が出るほどの感動を覚えたのがきっかけでした。
「右手がきかなくても、左手があるじゃないか」と自分に言い聞かせて始めたのです。
当初は手が震えて筆を持つどころか、つかむこともままならず、まったく文字の形はなしませんでした。
「やっぱり無理だ。やめよう」と思ったこともあったそうですが、いまでは左手で手紙を上手に書けるまでに上達しました。やはり人生の大先輩は違います。まさに〔継続は力なり〕のお手本を示してくれている稲葉さんです。
※発行当時の原稿をそのまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。
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