『入浴福祉新聞 第68号』(平成11(1999)年6月1日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
〔看護職と介護職の協働〕が在宅生活の質を高める
[訪問入浴のチームケア]の真価を発揮しよう
1987年に[介護福祉士]が誕生したころ、[看護]と[介護]の領域問題が活発に議論されましたが、ここへきてまた、来年度から導入される介護保険制度と、要援助在宅高齢者の急増を背景に、この問題をもっと検討すべきでは、といった声が出始めてきました。
とりわけ入浴援助の分野では、「訪問入浴サービスの実施にあたって、利用者の症状が安定していて、医師や看護婦の随行の必要がない、と認めた場合は介護職だけで実施できる」といった内容が、〔介護保険によるサービス提供機関の認定基準]に盛り込まれることになり、昨年の全国入浴福祉研修会の分科会でも話題になりました。
この[看護]と[介護]の領域をめぐる問題に関して、最近では、『社旗福祉学』(日本社会福祉学会発行)の1998年6月号で、熊本学園大学の永田千鶴氏が、「在宅ケア活動における看護と介護」と題して論文を寄稿していますので、お目をとおされると参考になると思います。
永田氏は、この論文のなかで、「看護介護も源は同じでも枝分かれをしてきた経緯があり、在宅福祉の活動でも役割分担は必要で、両職種が協働意識や対等意識をもちながら、連携や相互補完的な実践のなかで、質の向上に努めるべきである」と強調。
やはり、看護は医療的なケアに視点をおき、要援助者の健康問題からのアプローチをすべきで、一方の介護は生活から全体から利用者援助を考え、精神的な支えもする視点を課題にしたい、と述べています。
また、医療の分野と同様に、介護福祉でも〔チームケア〕が重視されるようになりましたが、看護職は医療関係者と、介護は福祉関係者と、それぞれが連携すべき役割をもつことで、効果と質が高まる、といったことを指摘しています。
訪問入浴サービスは当初から、看護職と介護職が合同で訪問してきましたが、最近は訪問看護サービスの初回訪問で介護職が同行する地域もあり、24時間対応型在宅ケアシステムのモデル事業でも看護職と介護職のペア訪問がベター、との報告も寄せられているようです。
デイサービスが各地で活発に実施されるようになりましたが、利用されている虚弱高齢者の多くは、デイサービスの最大の楽しみを〔入浴〕に求めているのです。それだけ家庭の浴室が利用できない高齢者が増加しているわけです。そのデイサービスでは、看護職による健康チェックが必ず行われています。
デイサービスの普及によって、訪問入浴サービスの対象者は、重度の障害をもつ高齢者が多くなってきました。在宅介護のいっそうの充実に向けて、看護職と介護職が合同で訪問してきた[訪問入浴の実践の積み重ね]の真価を発揮したいものです。
※発行当時の原稿をそのまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。
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