『入浴福祉新聞 第74号』(平成13(2001)年1月1日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
アメリカの医療・保健・介護を視察して
社団法人シルバーサービス振興会が主催する[アメリカの医療・福祉・保健関連の視察調査]がこの秋に行われ、デベログループを代表して私が参加しました。
調査団の一行は、10月2日に成田を出発し、10月12日に帰国するまで、ニューヨークの医療財務管理庁をはじめ、オーランドとロサンゼルスなど7カ所の関連施設や団体事務所などを視察するなど、かなりのハードスケジュールでしたが、アメリカの医療・福祉・保険の施設や仕組みを目の当たりにするのは、私も初めての経験でしたので、超高齢化が刻一刻と近づいている日本の方向を考えるうえで、たいへん参考になったしだいです。
健康面でも[個の責任]が強調されてきたアメリカでは、日本ほど公的な医療保険制度が整備されていません。しかし、高齢者や障害者、低所得者、子供などを対象にした公的保険は医療財務管理庁が運営していて、年間約7500万人が利用しているそうで、やはり[公の制度]の重要性を痛感させられました。
オーランドではちょうど、アメリカで最大級の医療・福祉機器展『メドトレイド』が開催されていました。日本も各地で機器展が開催されるようになりましたが、ここの規模は凄まじく、1100社が総計25万点以上を披露するほどで、その迫力に圧倒されました。
そのオーランドでは、「シニア・リソース・アライアンス」という、フロリダ州老齢対策局の事務所も訪問できました。
ここでは、ケア施設…ホームヘルプ…配食…訪問医療や介護…など高齢者が必要とする支援情報を集約しながら提供しています。IT(情報通信技術)大国であり、[ボランティア大国]でもあるアメリカだけに、利用者からのニーズに、地域のコミュニティ団体とも連携しながら即応できるシステムに感嘆したしだいです。
アメリカのIT大国ぶりは、ロサンゼルスの「ヘルスネット社」でも、まざまざと見せつけられました。この会社は、カルフォルニア州でも大手の医療ケアプロバイダーで、同社のネットが約45000人の医師、750の医療グループ、4200の薬局などを結ぶ一方、約220万の州民が加入しています。
一般加入者は、医療や薬剤の提供を受けたい場合、このネットで開示されている情報から適切な機関をリサーチしたり、相談したりできるシステムです。
また、この「ヘルスネット社」では、診察や治療のサービスを受けた一般加入者にアンケートも実施。いわゆる[評判のいい医師や薬局]をネットで公開しているのには、さすが、民主主義の国だと、敬服しました。
ロサンゼルスでは、このほか、2000年4月に開所したばかりのアルツハイマーや痴呆高齢者の長期住居型ケアセンター「シルベラート・シニアリビング」や、車椅子や在宅酸素、療養ベッドなど在宅医療に必要な機器や用品の販売業者「ホームヘルス・エクイブメント社」を訪ねました。
とくに「シニアリビング」は、リゾートタイプの施設で、立地環境の素晴らしさに驚嘆。スタッフも充実していてキメ細かなケアが行われていました。行動制限もほとんど行わず、園内の散歩は自由ですし、犬や猫などペットも同居させながら[動物療法]も取り入れていました。
日本ではようやく[縛る介護]への反省が始まったばかりですが、「やはり人権介護が当たり前のアメリカは違う!」考えさせられたしだいです。
※発行当時の原稿をそのまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。
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