『入浴福祉新聞 第30号』(平成2(1990)年4月1日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
「老人」と「寝たきり」という言葉
ふだん私達は何気なく使っているが、言葉ひとつで相手を傷つけることもあり得る。
また、以前は問題視されなかった語句も、時代の人権感覚によって放逐されることも珍しくない。
「老人」がいままさに俎上に乗せられているようである。
かつて「老」という字は、長老、老練、老公などがあるように、ネガティブな意味だけを含んだものではなかった。
尊敬語としても使用されてきたのである。
しかし、“老いた人”は“オワッタヒト”“オイボレタヒト”に通じてしまう。
そこで、地方自治体では、老人福祉課といった呼称を廃し、高齢者福祉課等に変更する動きが急である。
高齢者のグループ“老人クラブ”でも、「自分はロージンと思っていない」と、会名から「老人」を外すところも出てきた。
では代替語は何がいいのか。
「シルバー」では国際的に通用しないし、「シニア」となると、「早く死にや」を思い浮かべてしまう。
警察などが早くから使っている“若年齢者”“高齢者”といった言葉か、あるいは少々あたたか味を込めて“長寿者”などが、これから主流を占めてゆくのだろう。
ちなみに本紙ではかなり前から、固有名詞は別にして「老人」は使用していない。
ほとんどの記事で「高齢者」に統一してきた。
一方、「寝たきり」もヤリ玉にあげられ始めた。
本人の意志に反して「寝かせきり」にしてきたわけだから「寝かせきり高齢者」が正しい言い方である、と。
たしかにその通りであろう。
だが、これが在宅の場合に用いられると、家族に責任が転嫁されていしまう雰囲気が出てくる。
「病院や施設の寝かせきり高齢者」ならわかるが、「在宅寝かせきり高齢者」では、悪戦苦闘している家族を非難するような言葉になってしまうのだ。
本紙ではこれまで同様「寝たきり高齢者」としてゆくつもりだが、何かいい言葉をご存知でしたら、ぜひお教えください。
(露)
※発行当時の原稿のまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。
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