『入浴福祉新聞 第69号』(平成11(1999)年9月1日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
[大失業時代は福祉分野で雇用創出]案に
「現実を知らなすぎる」専門家が猛反発
[大量の雑貨を作って大量に売りさばく]といった経済活動を続けてしまった日本はいま、過剰雇用がますます鮮明化深刻化して、[店じまいの時代]と[大失業時代]を迎えたといわれます。
[経済構造の転換]すなわち、[雇用構造の転換]が叫ばれているわけですが、自民党や経団連が打ち出してきた[70万人雇用創出分野]のひとつに、介護福祉がターゲットになりました。たしかに、来年4月からの介護保険制度の開始と21世紀の超高齢化時代、そして介護の質の向上、などを考えますと、福祉関連の従業者はまったくの不足状態で、人員の増強は緊急の課題ではありましょう。
ところが、ヘルパーの研修時間や介護福祉士の教育年限を簡略化してでも・・・といった構想まで飛びだしてしまったため、介護福祉士関係の団体から、「まったく何を考えているのか?実情をまったく知らない者の発想だ」と猛反発をくらうことになりました。
現在のホームヘルパー研修は、リーダー向けの1級が230時間、正規職員向けの2級が130時間、そしてパートやボランティア向けの3級は50時間と定められています。
その3級を30時間ぐらいに減らし、介護福祉士資格が取得できる養成課程2年も短縮し、ヘルパーと介護福祉士を増やして、雇用してゆこう、との考えです。
こうした発想に対して、日本介護福祉士会や全国ホームヘルパー協会などの専門家団体が、「それでは介護サービスの質の低下を招く」と激しい批判を浴びせたのです。
介護福祉は成長ビジネス、などと言われますが、すでに、ホームヘルパーの研修を修了している人が29万人、介護福祉士の資格者が13万人もいるにもかかわらず、実際に就業している人は、常勤の介護職員換算で17万人に届いていない点です。つまり、資格を取得している人でも、介護福祉士の職がないわけです。「就職先は引く手あまた」と思っていた介護福祉専門学校の若い人たちは、そうした現実を知ると愕然とするそうです。
しかも、来年から始まる介護保険制度によって、「収入減は必至で、経営がかなり厳しくなる」と試算している福祉関係の経営者がほとんどで、[人員の相対的削減]をしてゆく雰囲気すら広がっているのです。
常勤を減らしてパートに切り換えたり、給与や手当をカットしたり、1人当たりの業務量を多くしたり、などが全国的に発生しているそうです。
そのため、介護保険が始まったら、労使紛争も多発する、とまで予測する識者さえいるのです。
介護福祉を[新時代型職業]として位置づけたいなら、要援助者に対する介護・介助の時間を大幅に増やしたり、専門職の給与や課税限度額の改善など、やるべき抜本的な対策はたくさんあります。
[失業対策]のような考えで介護福祉従事者をとらえる指導者がいたとしたら、この国の将来はかなり危ういように思えます。
※発行当時の原稿をそのまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。
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